白銀の魂
□けじめを付ける時は一対一で。でもたまには仲間を頼っても良いと思います。前編 第八話
1ページ/5ページ
鳥のさえずる声で瞳が覚めた。
目の前に赤毛が見えて息を飲み、神楽の顔がドアップで目に飛び込んできたことでかなり驚ろかされた。
銀時達と一緒にテレビというものを見ていたはずなのに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
今日は珍しく、大人しい寝息を立てて眠り続ける神楽の姿。
そんな彼女を起こさないようにと、沙耶はゆっくりとその身を起こす。
朝日が部屋に差し込み、寝ぼけ眼の瞳に少し眩しかった。
久しぶりに睡眠をとったからか、すごく身体が軽い。
小さく伸びをし、敷かれている布団の間を縫って歩き居間を目指した。
襖を開けてすぐに見えたソファーには、この部屋の家主、銀時が大口を開けて横たわっていた。
「銀……」
疲れているのか、沙耶の気配に気付きもせずに眠りこける銀時。
向かい側のソファーに腰を掛け、沙耶はしばらく銀時を見詰めたままボーッとしてみた。
この一週間、今までで味わったことのない日々を過ごしたな……と、ひとり考える。
暖かい人間たちの中で、温かい食事を与えられ、非道な任務に就かされることもなく、傷を癒すことが出来た。
いつもなら何かしら任務に就いていて、怪我人であろうが容赦なく働かされていたというのに……―――
彼らは、自分に名を与え、家族をくれた。
初めて……いや、かつて触れていたであろう平穏な日々を彼らと共に過ごして、沙耶の心は確実に変化していた。
殺すのではなく、生かしたいと。
そして、死にたいのではなく、共に生きたいのだと……―――
静かな寝息を立てる銀時から視線をずらし、いましがた出てきた部屋をチラリと見やる。
自分を姉だと慕う神楽を見付け、何とも言えない気持ちになった。
胸の辺りがくすぐったいような、切なくなるような……これは、きっと今まで忘れていた愛しさというもの。
「銀……神楽……」
傷は癒えた。
骨は繋がり、裂けていた肌は完全にくっついた。
昨日ぐっすりと寝たおかげで、細胞の再生が速まったようだ。
なら、すべきことが一つだけある。
「……終わらせてくる……―――」
二人を守るために。
決着を、この手で着けてくる。
奴らはそろそろこの場所を嗅ぎ付けるだろう。
目撃情報などなくても、目標を探すのに一週間は要らない。
すでに目星も着けているはずで、いつ襲撃があるかわかったものじゃない。
だから……―――
私が、先に出向いてやる。
やっと手に入れたこの平穏を壊されないように、奴らを、この手で壊滅させる。