magic of destiny
□第三章 ダイアゴン横丁
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と、文句ばかりを言う彼にハリーは冷たい瞳を向ける。
「彼って最高だと思うよ」
低く言い放ち、少年はそれを鼻で笑った。
「へぇ?どうして君と一緒なの?君の両親はどうしたの?」
「死んだよ」
ハリーの声がどんどん冷たくなっているのに気付き、リディシアはチラリと隣に立つハリーを見た。
ちょうどリディシアの採寸が終わり、魔女の「終わったよ、お嬢さん」という言葉と共にハリーの側に寄っていく。
少年はリディシアの姿に気付くと一瞬だけ表情を変えたが、またすぐにハリーに視線を戻し肩をすくめた。
「おや、ごめんなさい」
と、なんとも心のこもっていない口振りで謝り、それでも言葉を続ける。
「でも、君の両親も僕らと同族なんだろう?」
「魔法使いと魔女だよ。そういう意味で聞いてるんなら」
と、短く吐き捨ててハリーはリディシアに視線を移した。
少年を見ているのもいやになったのだろう。
そしてリディシアは、ややあって少年の姿に見覚えがある理由を思いだし内心舌打ちを打ちたくなっていた。
「ドラコ・マルフォイ……―――」
微かに呟いて、リディシアはまっすぐ彼を見た。
ハリーの天敵だ。
「連中は僕らのやり方がわかるような育ち方をしてないんだ。手紙をもらうまではホグワーツのことだって聞いたこともなかった、なんてやつもいるんだ。考えられないようなことだよ。入学は昔からの魔法使い名門家族に限るべきだと思うよ。君、家族の姓は何て言うの?」
と、両親が魔法使いではない人間を批判する言葉をつらつら並べる少年。
良く回る口だ。
リディシアはハリーが答える前にずいっと一歩を踏み出し、何か言ってやろうと口を開いた。
が、マダム・マルキンの「さあ、終わりましたよ、坊ちゃん」という言葉でハリーが踏台から降りたのを見て、口をつぐませる。
この場からさらば出来るなら言う必要もない。
店を出ようとするリディシアとハリーに向けて、少年は気取った口調で声を掛けてきた。
「じゃ、ホグワーツでまた会おう。たぶんね」
後ろ耳でそれを聞き、憤慨に黙りこくったまま店から出てきた子供たち二人にハグリットが怪訝な表情をみせた。
「どうした?」
と聞かれたが、リディシアは首をふるだけで、ハリーは「なんでもないよ」と嘘をついた。
ハグリットが持ってきたナッツ入りのチョコレートアイスと、ラズベリーアイスを食べながらハリーはずっと黙りこくっていた。
リディシアはラズベリーアイスを食べている間、次々と現れる見覚えのある人物たちに思いを馳せていた。
アイスを食べ終わり、次は筆記用具を買いに行こう。
と、三人は文具店にやってきた。
勝手に文字の浮かぶ羊皮紙はないかと、リディシアが目に映る羊皮紙全てに手を触れさせてみたが、そんなものは一枚もなく、ハリーは書いているうちに色が変わるインクを見付けて少し元気になっていた。
それぞれ買い物を終わらせ店を出ると、ふいにハリーがハグリットに尋ねた。
「ねえ、ハグリット。クィディッチってなあに?」
そう尋ねたハリーに、ハグリットは目を見開きたまげたという顔をした。
「なんと、ハリー。お前さんがなんにも知らんということを忘れとった……クィディッチを知らんとは!」
と、ハグリットが驚いてみせると、ハリーは先ほどのようにまた暗い顔をして肩をすくめた。
「これ以上落ち込ませないでよ」
と肩を落とすハリーに苦笑を溢し、リディシアはマダム・マルキンの店でのことをハグリットに話した。
「……その子が言うんだ。マグルの家の子はいっさい入学させるべきじゃないって……」
沈んだ声で呟くハリーに、ハグリットは眉間にシワを寄せ首を小さく振った。
「お前はマグルの家の子じゃない。お前が何者なのかその子がわかっていたらなぁ……その子だって、親が魔法使いならお前さんの名前を聞きながら育ったはずだ。魔法使いなら誰だって『漏れ鍋』でお前さんが見たとおりなんだよ」
と、ハグリットはハリーに言い聞かせる。
「俺の知ってる魔法使いの中には、長いことマグルの家系が続いて、急にその子だけが魔法の力を持ったという者もおるぞ……お前の母さんを見ろ!母さんの姉貴がどんな人間か見てみろ!」
そう熱弁するハグリットに苦笑し、リディシアはふいに最初の疑問を思い出していた。
「それで、クィディッチって?」
と尋ねれば、ハグリットはハッとしたように話を戻した
「俺たちのスポーツだ。魔法族のスポーツだよ。マグルの世界じゃ、そう、サッカーだな……」