10/16の日記

01:59
小さな愉快
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今日はいやに天気が悪かった。


道端の花や草も心なしか元気がなさそうに見える。


小生も今日は元気がない。


だからだろうか……。


小生の足下に、コロボックルのような小さな人間の形をした生き物が見えるのは。


しかも、三匹も居る。


どういうことだこれは。


小生の脳ミソは年中春だが、まだ夢の世界に旅立った訳ではないはずだ。


そこで小生は、この小さなコロボックルたちに耳を傾けてみた。


なるべく足を動かさないようにして、しゃがみ込んで彼らを良く見てみる。


すると聞こえてきたのは、何とも楽しい会話だった。


「おお、おお。こんな所に小山があるぞ」


「バカ言え。これは巨人の足だ」


「だが、さっきからピクリとも動かないぞ」


「きっと眠っているんだろう。巨人は立ったまま寝ることが出来るのかもしれん」


「いやはや、そうか、なるほど。ならば起こさないように、慎重に行かねばならんな」


「だけど足が邪魔で遠回りをしなきゃいけないよ」


「ならば越えてみようか?」


「ダメだダメだ。それだと起こしてしまうかもしれない。諦めて回り道をしていこう」


「仕方ない。そうしよう」


「わかったよ」


なんて会話が聞こえてきたのだ。


小生の足が邪魔でわざわざ遠回りしようというのは、なんだか少し寝覚めが悪い。


いや、コロボックルたちが言うように寝ていたというわけではないが、無駄な足労をさせるわけにもいかないだろう。


小生は、よっこいしょと、コロボックルたちを踏まないよう足を一歩踏み出した。


そしてまた聞こえてきた会話にこっそり笑ってしまう。


そのまま歩を進めて、少し遠くからコロボックルたちが去っていくのをじっと眺めていた。


コロボックルとはなんて面白い生き物なのか。


小生は、今日が少し良い日に感じられた。


小さな小さな彼らを、また何処かで見掛けることはあるのだろうか。


また出会ったなら、今度は話しかけてみようと思った。


コロボックルたちは、愉快な生き物らしいので……。






「お、巨人が動いたぞ」


「ありがたい。これで遠回りせずに先へ進めるぞ」


「巨人さん、ありがとー!!」


「ありがとう!」


「ありがとう!!」


「さあ、行こう!」




最後に聞こえたコロボックルたちのこんな会話を、小生はしばらく忘れないだろう。

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