海よ、空よ

□十日間の同盟
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いつも通り定時で上がった二人は、いったん家に帰宅した




が、その数時間後

ケイトはルイの家であり、行きつけのバーでもある建物の前にいた










「こんばんは、マスター
いつものください」

「おや、ケイト。いらっしゃい




……ルイー、お客さんだよー」



バーに入り、ケイトは慣れた様子で真っ直ぐカウンターに座る

カウンターまで歩く間に視線を感じたが、相手は予想出来たから気にしなかった


二階に声をかけたマスターが、「ごゆっくり」と微笑み、いったん席を外した






『はーい……



いらっしゃい、“お客さん”』

「あぁ。“久しぶり”だね、ルイ」



意味深に笑い合い、彼女はカウンターの中に入ってケイトの目の前に立つ

ちょうどよくマスターに手渡されたシェイカーを受け取り、こちらも慣れた様子でカクテルをつくりだした








ルイとケイトは、海軍に聞かれると都合が悪い話があるとき、決まってここに来る

ケイトは客として、ルイは店員として

これならカモフラージュになるし、何より、島に流れ着いた人間がルイと島の大佐が同一人物だと気付く人間がぐんと減るからだ




二人は端から見れば、行きつけのバーでお気に入りの店員を口説いている若い男性と、まんざらでも無さそうに接している若い女性にしか見えない




実際には、二人の会話の内容は全く違う





だが、そうしてカモフラージュすることにより、自然と二人の近くには人がいなくなり、最高の密談場所が出来上がるというわけだ

















『………で?
そっちはどうだった?

昼間のあの“お客さん”は』

「……………すぐそこにいるじゃねぇか

しかもめっちゃ見られてるし、なんか居心地悪い」

『仕方ないでしょ』



ルイはクスリと小さく笑い、ケイトは苦虫を噛み潰したような顔をして、少し後ろを振り返る

視線の先にある奥のソファーには、“昼間のお客さん”……もといローが仲間達と一緒に座っていた

もはや定位置となったそこでグラスをあおりながら、時折ルイとケイトを見ている




その視線にケイトは苦笑いした




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