海よ、空よ

□バーで二人
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「お帰りキャプテ〜ン」

「何話してたんスか〜?」

「ただの世間話だ」

「あの男、海兵ですよね?」


カランコロンとカウベルの音がしたと思うと、ケイトとの話が終わったらしいトラファルガーが戻ってきた

クルー達にいろいろと話し掛けられているが、それらを適当に受け流し、トラファルガーはソファーに座る



ちらりと目を向ければ、ちょうど奴もこちらを見た

それに軽く笑みを見せ、一度部屋に戻った
















「……ペンギン、話がある。一度船に戻るぞ」

「?

…分かりました」


酒を飲んでいたペンギンがグラスを置き、ローの後に続いて店から出ていった










***


「あのね!
今日もね、ベポに遊んでもらったの!
それにシャチがお花の冠作ってくれたし、ペンギンはお話いっぱいしてくれてね!」

『そっか。良かったね、優しい海賊さんで』


レニィを着替えさせていると、楽しそうに今日あった出来事を話してくれる
ハートのクルーのほとんどに遊んでもらったことがあるらしく、最近ではよくハートの海賊団に混じって席に座っていることもある

噂よりも人当たりのいいハートの海賊団に少し驚いた








「楽しかったよ!
キャプテンはね、いつもいないから遊んでくれないんだけど…

でもこの間ね、キャプテンの頭に乗った!ベポが手伝ってくれた!」

『ぶっ!!』



思わず吹き出してしまった

“死の外科医”と人から呼ばれ、かなり無愛想なあの男の頭に、まだ六歳の小さなレニィが乗っかったところを想像したら、吹き出してしまうのは仕方ないことだと思う



この子は大物になるのでは、とレニィの髪の毛をとかしながら思った











「お姉ちゃん、キャプテンのこと嫌っちゃダメだよ」

『……どうして?』


鏡にうつるレニィは頬をふくれさせ、私の目を鏡越しに見ていた








「お姉ちゃんは海軍の偉い人だから、ベポ達の敵だけど、でもみんないい人達だもん!

お姉ちゃんとベポ達がケンカするのは嫌!」

『……そっか、嫌なんだ?』

「絶対いや!

お姉ちゃんが怪我するのも、無茶するのもいや!」


そう、と優しくレニィの頭を撫でる

それに目を細める彼女を見て、固く誓った









『絶対守るからね』


レニィもマスターも、この島も





全部










***





「ロー船長、あの男と何かあったんですか?」


バーから島の裏手に停泊させてある船に移動していると、ペンギンが話し掛けてきた


先ほどからずっと気になっていたらしく、ローがバーに戻ってすぐにも一度同じ質問をしていた








「…さっきの海兵は、俺たちが初日に見かけた奴だ
この島の奴らも話してたケイトって男

ここまでは分かってるよな」

「分かってます」

「今日、ここの海軍基地の敷地内に潜入した」

「…………はぁ?!」


ペンギンが素っ頓狂な声を上げる

こういうリアクションをするのは予想していたが、予想通り過ぎて面白い









「……あ!あの時っすか!

みんなで表通りを歩いてたときに、船長だけどっか消えたあの時!!?」

「あぁ、その時にあの山の上にある基地に行った

そしたら、ケイトとルイっていう大佐に会った」



話しているうちに船に着いた

そのまま二人はローの部屋に移動し、話を続ける








「そこで、バローとかいう島民どもが話してた中将も見かけた
コイツにはバレてねぇから安心しろ」

「………海兵と接触した時点で安心出来るわけないでしょう…」

「十日後、海軍本部から大将黄猿が来るそうだ」

「はぁ?!」

「そこで、ケイト達と一時同盟を組む」

「すんません船長、一回話すの止めてください」

「……ククッ、だろうな」


目の前で眉間に手をあてて混乱しているペンギンを、楽しそうに眺めるロー

しばらく待つと、ペンギンが恐る恐る口を開いた








「…………黄猿ってマジっすか」

「あぁ、ケイトからの情報だ」

「ハートの海賊団が、そのケイトとかいう海兵と同盟を組むメリットは?」

「“情報”と“安全”……だそうだ


ケイト達にとっても黄猿が来ることは都合が悪いようでな、情報をくれる代わりに島では大人しくしてろ、と要求してきた」

「…………船長はずいぶんケイトを信用してるみたいッスけど、何でですか?」


ペンギンが疑わしそうな眼差しをローに向ける

その視線を軽く笑い、ローは部屋にあるテーブルの上から酒瓶を手にとった



ルイがローにくれた、北の海の酒だ

結局、まだ飲んでいない



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