海よ、空よ

□逃げろ
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『………。』



翌日、いつもならケイトが出勤してくるはずの時間なのだが、まだケイトが来ない

最初は寝坊でもしたのかと思い、気にせずにいた






だが、そうこうしている内に時間は過ぎ、いつの間にかケイトが出勤してくるはずの時間を何時間も過ぎていた





『(確認に行っても休みの連絡は入ってない
昨日は風邪を引いてる様子もなかったし、無断でサボるような奴でもない……)』




胸騒ぎがする








のんびり仕事をするような気分にもなれず、席を立ったり座ったりと、誰もいない部屋でせわしなく動き回っていた



すると、誰かが部屋に近付いてくる気配がした














『…ケイト?


………!』








カチ、と脇に差してある刀に手を添えた





















――――バァンッ!!





その気配は部屋の前で止まるなり、勢い良く扉を蹴破る


蹴破られたその瞬間に、ルイは相手の喉元に刀の切っ先を突き付けた










「…………さ、さすがルイ大佐
素早い動きでした


よく今の一瞬で反応なさいましたね」


両手を上げ、引きつった笑顔を浮かべている扉を蹴破った張本人は、バローの元側近の一人だった

ルイのただならぬ殺気と、喉元に突き付けられている刀に恐れをなしたのか、声がわずかに上ずっている











『……あんなに殺気出しながら近付いてくれば誰だって分かる


ケイトは殺気出す必要はないし、おたくの上司はもっと静かに歩く

第一、この部屋に来る人間なんて限られてる。相手があんただと分かった時点でかまえていれば済むだけの話だ』




彼女の刀が光に反射して怪しげに輝く


ごくり、と男性特有のごつい喉仏が大きく上下するのを確認してから、刀を下げた







すぐにふー、と大きくため息をもらす側近

しばらくすると、無表情で彼女の目を見つめ、口を開いた














「………ケイト中尉ならここには来ませんよ

…いや、来れない、と言った方が正しいですな」


『?!

どういうこと?』


「………そうだルイ大佐、バロー中将がお呼びです」


『!!』


「行けば分かります

さぁ、こちらへ…」




側近が恭しく、蹴破られた扉の先をすすめる


ギロリと一睨みした後、キンと音を立てて刀を鞘におさめ、すっかり行き慣れてしまったバローの部屋への廊下を歩き出した



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