宍戸さん

□エキシビジョンマッチ
2ページ/3ページ




忍「お、なんや宍戸

自分のペアは瀬戸さんやんか、ええな」

宍「誰だよそいつ、んな奴知らねえぞ」

向「そいつは俺と同じクラスの奴だぞ
確か女テニのシングルス1だったはず」

芥「あー!宍戸いーなー!雫ちゃんじゃん!」

跡「……ジロー、次寝たフリしたら試合には出さねえからな」

芥「今起きたの!」


跡部に叱られヘコむジロー、そんな二人のやり取りに呆れつつ、自分はもう一度プリントを見る







宍「瀬戸、ねぇ…


なぁ岳人、コイツどんな奴?」

向「うーん……、跡部っぽい」

忍「何やそれ」

芥「A〜!?雫ちゃんは優しくて良い子だよ!!」

宍「ジローは知り合いなのか?」

芥「まぁね〜、本当に良い子だよ!だからペアになれて良かったね!」

宍「………どうだか」




ぴ、とプリントを机に戻し、イスに座る

周りの評価を聞いたところで、自分と気が合うかどうかなんてのは会ってみなけりゃ分からない


そんな事を言えば、なら会ってみるか、と跡部が立ち上がった




宍「……は、え?」

跡「だから、会ってみるかと言ったんだ

そもそも、この後は女子との顔あわせをするつもりだったし、ちょうど良いだろ

じゃ、ミクスドのメンバーはついて来い」

宍「え、マジかよ?!」

跡「マジだ


……まさか、宍戸

練習無しでいきなり本番の試合をするつもりじゃねぇだろうな?

そんなんで良いパフォーマンスが出来るとは思ってねえよな?



ミクスドも立派なエキシビションマッチの一部だ、学校側からの依頼でもあるし、無様な真似を晒すような事だけはするなよ」

宍「………チッ、分かってるよ」




はぁ、と溜息を吐き、部室を後にする

そのまま女子が練習をしてるコートに向かうと、コートの外で数人の女子が集まってるのが見えた














『ちょっと待って!私はエキシビションマッチは辞退するってちゃんと言ったはずよ!!

なのに何で出場することになってるの?!』


「んな事言われたってねぇ!そもそもシングルス1のあんたが出なきゃトーナメントのトリがいないじゃない!!

あんたがウチで一番強いのよ、あんたがいなきゃ盛り上がるものも盛り上がらないわ」


『強いのはみんなもそうでしょ?!

私がいなくても充分じゃん!!』





人だかりに近付くにつれ、そんな言い争いが聞こえてくる

揉め事か?と岳人がヒソヒソと俺に言うが、遠目ではよく分からなかった









「だいたい!あんたがエキシビションマッチに出ない理由は何なのよ!?

それを聞かされてないんだけど!!」


『っ、言えない』


「……あんたまさか、どっか怪我とか『それは違う、どこも怪我してない』

………じゃあ何で」





ぐ、と片方の女子が言い淀んでいるのが分かる

髪が短いのは分かるが、背中を向けているため顔は分からない


隣で岳人が「あ」と呟いた











『っ、とにかく!
私はエキシビションマッチには出ないから!!

それじゃ、用があるから帰る』


「は?ちょ、雫!!」





雫と呼ばれた制服を着た女子がくるりと振り返る

そこで初めて俺らの存在を認知したらしく、驚いていた






跡「よぉ、お姫様

今日はずいぶんご機嫌ナナメだな?」

『……はー、跡部の顔を見てさらにナナメになった』

跡「は、酷い言い様だな」

『私帰るから、じゃ』




跡部をちらりと一瞥し、カバンを背負い直して横を通り過ぎていく


近くで横顔だけ確認できたが、目付きが鋭く、強気そうな印象を受けた









跡「おい、女テニはどうなってんだ

お姫様のご機嫌が大層悪いようだが?」

「……雫、エキシもミクスドも出ないつもりみたい」

向「え、何で?3年で一番強いのはアイツだろ?」

「そうだけど、何度聞いても出ないの一点張りで…

出ない理由は教えてくれないし、もう訳わかんない」



はぁ、と肩を落とす元女子テニス部の部長

さっきの揉めてた原因はそれか、と納得していると、跡部が俺を振り返った












「宍戸、お前のペアは今帰ったアイツだ」


「…………は?!!」


「色々大変そうだが…、そうだな、まずは大会に出るよう説得するところから始めてもらおうか


姫様をミクスドに参加させられなかったら、お前のトーナメント出場も再考する必要が出てくる」


「なっ、ちょっと待てよ!いくら何でもそれは横暴だろうが!
どうして俺のトーナメント出場が怪しくなるんだよ!」


「ペアならば連帯責任だ、お前も常日頃から言ってるだろ


頼んだぞ」




ふ、と楽しげに笑う跡部にさらに怒鳴り散らす

だが後ろから長太郎と若に抑えられ、しぶしぶ口を閉ざした


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ