宍戸さん
□お守り代わり
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***
翌日
昼休みに久しぶりにある教室に赴き、ひょこりと中を覗き込む
だが目的の人物がいなくて、どうしようかと悩んでいるところで背中から声がかかった
「自分、瀬戸さんやんな、ここで何しててん」
聞き慣れないその声に振り返り、あ、と声をもらす
面識はほとんどないが、その人のことは知っていた
時折うちのクラスに現れるからだ
『向日と仲が良い人』
「んー…、まぁ合っとるけど…
俺は忍足や
で、自分はここで何しててん
ジローも宍戸も今はおらんよ」
『どこにいるか知ってる?』
忍足という名は聞き覚えがあったし、そう言えばエキシビジョンマッチのトーナメントにいたなぁと今さらながらに気付く
そんな彼に居所を訪ねると、苦笑いをされた
「ジローがどっかで寝とるらしくてな、宍戸が目下捜索中や」
『ジロちゃんを探してるなら心当たりがある
ありがとう忍足くん』
「おん
受験頑張り」
ひらひらと手を振る彼に、ありがとう、と返して歩き出す
ジロちゃんがこの時期好む昼寝スポットに心当たりがあったのだ
そこに向かって急いで廊下を歩いた
***
外に出て、テニスコート近くのベンチを探す
日当たりが良いそこでは、思った通り、ジロちゃんが寝ていた
『ジロちゃん』
「ん〜〜…?
あれ、雫ちゃんだ〜…、どうしたの〜…?」
『宍戸を探してるの、ここに来れば会えるかと思って』
そう言ってジロちゃんの邪魔にならないように、ベンチのすみに腰を下ろす
ここからはテニスコートがよく見えて、去年も一昨年もこうしてジロちゃんとここで話した記憶があるのだ
『……やっぱり、ここにいた』
テニスコートに目を向ければ、ギャラリーの壁に向かって壁打ちをしてる宍戸の姿が目に入った
この時期なのに半袖で、ジャージを着ていない
「宍戸寒くないのかな〜…、ジャージ忘れたって言ってたけど〜…」
『……バカは風邪ひかないとは言っても、アレじゃさすがにね』
ふ、と笑い、ベンチから腰をあげる
私の手にあるものを見て、ジロちゃんがあれ?と声を発した
「なんで雫ちゃん、そのジャージ持ってるの?」
『バカの忘れ物』
そう言ってジャージを手にコートに向かうと、後ろでジロちゃんが笑う声が聞こえた
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