金田一

□花が似合う人
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『木下薫です

四月から宮城に住み始めたので、知り合いもいないしここら辺のことも何も知らないので、教えてくれると嬉しいです』









そう黒板の前で気恥ずかしそうに自己紹介をする彼女を見た時、何となく「儚げな人」という印象を持った



それと、「花が似合う人」







後者の印象は、きっと彼女が淡い花柄のマスクをつけていたからだろう



左側でゆるく束ねた髪の毛を胸元に流し、時折髪に触るその仕草はまさに女の子、という感じだった










『……あ、それと、喘息持ちなので突然消えることがありますが、気にしないでください』



はは、と苦笑いを浮かべてそう言うと、彼女は一礼してから席に戻った


彼女が俺の前の席に座ると、担任からも補足説明がされた

彼女の喘息は発作的な物で、たまに咳が止まらなくなるらしいと








「(大変だな)」




ぼんやりとそんな事を考えていると、次の自己紹介の番になった

次は俺だ


少し慌てて立ち上がると、椅子が大きな音を立てた

俺の後ろに座っている国見が笑う声が聞こえたが、無視して教室の前に向かった















***



「えと、金田一勇太郎です
中学は北川第一で、バレー部でした。高校でもバレー部に入るつもりです

1年間、宜しくお願いします」



パチパチパチと拍手が起こる



私の後ろ、つまり出席番号が前後の男の子を見て、「長い人だな」と思った


失礼だろうけど、なんと言うか、背が高いのは分かるが、髪型的に長く見えたのだ




金田一くんはクラスでも1番背が高く、初めて教室に入った時に1番最初に目に入った


なるほど、確かにあんだけ身長があればバレーでは有利だろう

バレーには詳しくないが、背が高い方が有利なのは分かる





自己紹介を終えた金田一くんが席に戻る途中、私の席の横で立ち止まり、屈んだ



え?とつぶやく私に、彼は手を差し出したのだ









「これ、木下さんの?」




そう言って手のひらを開くと、そこには花をモチーフにしたキーホルダーがあった
私がカバンに付けていたものだったのだが、落ちてしまったのだろうか






『ありがとう』



ふわりと笑って金田一の手からキーホルダーを受け取る薫を見て、金田一は「やはり花が似合うな」と思った










「どういたしまして」



に、とあどけない笑顔を返した金田一に、薫はさらに笑みを深める







いい人そうだな、お互いにそう感じたのだ





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