金田一

□隠しきれない恋
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入学してからしばらく経った


徐々にクラス内でも友達が増えたり、部活での交友関係が広まったり、みんな高校生活に慣れてきたようだ









そして、俺はいつしか
木下のことが好きになっていた






入学して間もないのにすぐ人を好きになるものだろうか

そう疑問に思ったし、軽薄だと思って認めないようにしていた


だが、ある日









「金田一さ、お前木下さんのこと好きだろ」


「っ、ゴホッ!!」


「うわ、吹くなよ

まぁ狙って言ったんだけど」


「っ、はあ?!」




唐突に言われたのだ、国見に


放課後の部活が終わった後の自主練の時間に

しかも人がドリンクを飲んでるタイミングで







「なんっ、で!」

「何でって、お前分かりやすいし

木下さんが発作起こすとさ、お前決まってあの子の心配してんじゃん
大丈夫かな、って」

「そりゃ心配するだろ!」

「いや、普通ただのクラスメイトの事そんなに心配しないでしょ、相手女子だし

そりゃ、たまに俺も大丈夫なのかなって思うけど、お前がクラスの男子の中で1番心配してる」

「……それは、わりと、仲良いから、だよ」




だんだんと語尾が小さくなる


入学してすぐに彼女の発作を実際に見たのは俺だ

最初は本当にビックリして心配したし、こんなにヒドイものだとは思ってなかった



それからしばらく、彼女は発作が起こりそうになると教室からいなくなるようになった

たまに授業中に咳き込む時もあるが、それは俺があの時見たときよりは軽いものだ

それでも心配になるから、たまに声をかけている


それを国見は見てたんだ









「そんなに心配になる理由なんてひとつしかねーだろ」

「………まぁ、……だけど」

「え?なに?ハッキリ言えよ」

「………好き、だよ、木下のことが」

「ほら」

「………………。」





に、と国見が小さく笑う


恥ずかしくて顔を真っ赤にしていると、国見に背中を叩かれた








「ま、応援くらいはしてやるよ」

「………そりゃどーも」





眠そうな顔をしてよく見てる、なんて心の中で思っていると、「何か失礼なこと思っただろ」と怒られた









「木下さん大人しいし目立たないから、お前以外の男子とはそんなに仲良くないじゃん

良かったな」

「………。」





ムス、としていると、国見はまた笑った















***





それは突然言われたのだ




「金田一ってさ、多分薫のこと好きだと思うよ」

「あ、分かる
私も思ってた」

『え?』




昼休み、お弁当を食べ終えた私たちは色々な話に花を咲かせていると、唐突にそう言われたのだ



金田一くんが私を好き?







『いやいやまさか、まだ知り合って数ヶ月なのに』

「バカねー、恋は落ちてくるのよ突然に」

「それに好きになったら出会った時間なんて関係ないって!」

『はあ……』




友人らがやけに強く言ってくるのに若干引いていると、2人は私のことなんてお構いなしに話を続けた






「金田一って態度に出やすいっていうか、良くも悪くも素直なんだよね
嘘付けないし頼まれたら断れないタイプ」

「そうそう、いい奴なんだけどね

薫はどう思うの?」

『え?優しいなーって思うけど……』

「うん良い返事、期待を少し外す感じ」

「薫って恋愛とか興味無いよね、本当に」

『うーん……、無いかも

昔は引っ越しばっかしてて、男の子と打ち解けることがほとんど無かったから』

「じゃあ金田一はわりと打ち解けた?」

『私はそう思ってる……けど』

「「ほうほう」」




2人はによによと不気味な笑い方をしながら私を見てくるが、私はただただ引くことしか出来なかった












「じゃあさ、初恋の思い出はあるの?」

『え、初恋まだだけど』

「「は?!」」




2人が驚愕するのが手に取るように分かる

だが事実なのだ、悲しいことに






まだ話を続けるつもりなのか、2人は口を開いたが、その時に金田一くんに名前を呼ばれた


はーい、と返事をして席を立つ

今日の昼休みは花壇の水やり当番だ


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