金田一
□ヘタクソな隠し事
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男子バレー部の合宿のお手伝いをしてから一週間以上が過ぎた
いつもの日常に戻った私には、ある悩みが浮上したのだ
最近、発作が起こる事が多くなった
授業中、休み時間、家
どこにいても発作が起きてしまい、最近ではマスクが手放せない
だが幸いにも、花を吐くまでには至らないし、ひどく咳き込んで終わるぐらいで済んでいる
なぜ最近は発作が頻発するのか、今まではこんな事無かったのに
理由が分からなくて、とりあえずネットや医学書などで色々と調べてみた
だがそもそも花吐き病自体が奇病であり、認知度が極端に低い
そのため文献が少なく、大した情報が得られないのだ
***
「あれ薫、どこ行くの?」
『図書室、借りたい本があって
ちょっと行ってくるね』
「うんー、無理すんなよー」
『大丈夫だよ』
昼休みに一緒にお昼ご飯を食べていた二人に一言断りを入れ、教室を出る
そのまま図書室に向かった
***
昼休み、カラカラと扉が開く音がして、ふとそちらを見た
そしたらちょうど木下が教室から出て行くところで、その手には花柄のマスクが握られていた
「金田一、見過ぎ」
「え」
「木下だよ、確かに最近体調悪そうだけど心配しすぎ
お父さんかよ」
「ちっ、げーよ!」
バン、と机を叩いて国見に抗議すると、うるさい、と一蹴された
「あのさ、お前は木下とどうにかなりたいとかない訳?
いつまでも片思いしてんな鬱陶しい、らっきょの分際で」
「おい国見こら、何でいきなり暴言吐かれなきゃいけねぇんだよ」
「木下だって気付いてるだろ、お前が自分に気があるって事くらい
だったらさっさと告白なりなんなりしちまえばいいのに
そして爆ぜればいい」
「何なんだよお前は!!」
国見がぶつぶつと文句を言いながら、いつの間に買ってきたのか、塩キャラメルを口に放った
それをもぐもぐ食べ、大きなため息をついたかと思えばそのまま机に突っ伏した
中学の頃からつるんでいるが、コイツと影山のマイペースぶりにはいつも振り回されていた
目の前で昼寝の態勢に入った友人に呆れつつ、自分は午後の授業の準備を始めた
確かに国見の言う通り、告白の事は考えている
自分は国見とは違って隠し事とかが凄く下手だ、だからきっと気付かれていると思う
けど木下は俺と話してると嫌そうな顔はしないし、話しかけてくれるし、俺の前でよく笑ってくれる
だから、少なからず好意はあるんじゃないかとは思う
だから、出来ればこのまま良好な関係で
あわよくば、発展すればいいかな、なんて思っていた
***
青葉城西高校は私立高校で、文武両道をモットーとしている
大学進学率もそこそこ高いため、図書室には多くの本が揃っている
そこで自分が読みたかった昔の本を見つけ、借りようと手に取ったまま図書室をぶらぶらと歩く
ざっくりとジャンルごとに棚が分かれているが、図書委員が適当なのか、たまに変なところに変な本が置いてあったりするのだ
『……?
”奇病の都市伝説全集”?』
たまたま見つけたそれは、なぜか推理小説コーナーにあった
わりと新しいのか、それとも誰も読んでいないのか、どちらなのかは分からないが、表紙は傷が少なく、綺麗な本
奇病、その単語につられて本を取り、目次を開いてみた
意味の分からない病名が並ぶ中に、気になる文字を見つけた
”恋慕の情が花びらとなる奇病”
すぐにそのページを開いてみた
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