金田一
□違和感と不審感
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体育館に入ってきた国見は、何となくイライラしてるように見えた
いや、実際イラついてる、みたいだ
国見の後から来た及川さんがいろいろと話しかけたり、岩泉さんが首を傾げたりしてるのを見るに、不機嫌になったのはさっきだろう
さっきは木下と普通に話してたのに、いきなりあんな風になるなんて、木下と何かあったのだろうか
岩「おい、金田一」
金「はい!」
岩「国見と木下、喧嘩でもしたのか?」
金「え
いや、そんな事ないと思います、けど…
さっきも二人でゴミ出し行ってたし、普通に話してましたし…」
岩「ゴミ出し?……あぁ、だからさっき外にいたのか
俺と及川、その時に二人に会ったんだけどよ」
金「はい」
そこまで言うと、一度言葉を止めて国見を見る岩泉さん
俺もそれにならって国見を見ると、国見は及川さんや花巻さんに絡まれて心底面倒臭そうな顔をしていた
岩「……なんか、木下がしゃべった途端に国見がすげぇ眉間に皺寄せてて
もしかしたら、木下が国見を怒らせるような事言ったんじゃねーかと思ったん、だ、が…」
金「……木下が国見を怒らせる…?」
岩泉さんには悪いと思ったが、嘘だと思った
そもそも国見は誰かと喧嘩するなんて事はないし、そういう人間関係のこじれをめんどくさがる
それに木下も、誰かを怒らせるような発言をするタイプではないし、喧嘩するような奴でもない
それに国見と木下は普段から仲が良いし、あの二人がそうそう人前で喧嘩するように思えないのだ
そういった俺の感情が顔に出てたのか、岩泉さんは俺の顔を見た後に「悪い、今のナシだ」とつぶやいた
岩「たまたま見かけただけだし、国見もあの調子だから気になっただけだ
それに木下の事は、俺らよりお前ら一年の方が知ってるだろ
悪いな、変な事言って
今のは気にすんな」
金「……うす」
ぐしゃぐしゃと岩泉さんに頭をかき回される、そのままニカッと笑うと岩泉さんは及川さんの回収に向かった
だが俺は、今の岩泉さんの話が気になっていた
***
金田一がうざい
顔がうざい
何かもう訴えかけてる感がうざい
うるせえな聞きたい事は分かってんだよ
「あのさ金田一、お前バカなんだからハッキリ言え」
「ちょ、待て国見テメェこら、今何つった」
「聞きたい事あんだろが、お前みたいな大男に部活中ずっと見られてると落ち着かねーよ」
「お前何なの俺の事嫌いなの?!」
「うるせえらっきょ」
「何なんだよ!!」
ギャイギャイ騒いでいたら、コーチにさっさと片付けろとどやされた
とりあえず片付けが先だと金田一が言い、得点板を倉庫に運ぶ
相変わらずクソ真面目な奴だ
***
国「俺さ、別に木下の事嫌いじゃないよ
むしろ女子の中じゃ一番しゃべる相手だと思うし、気が合うとも思ってる」
金「お、おう」
国「……それはまぁ後にして…
なんで先輩達帰んないンスか、俺今日鍵当番なんですけど」
花「面白そーだから」
松「同上」
岩「心配だから」
及「俺も」
国「及川さんはどっちに賛同したんです?花巻さん?岩泉さん??」
及「もちろん岩ちゃんにだよ!
国見ちゃん俺の事なんだと思ってるの?!」
やんややんや騒ぐのは三年生のレギュラー達
もう部活は終わって帰るはずなのに、俺が鍵当番なのと今日の様子から興味を持ったのか、何故か居残っていた
岩「お前が部活前に木下と話してたのを見たけど、この間の合宿みたいな雰囲気だったから気になっただけだ
理由が分かったら帰る」
国「………。」
この間の合宿みたいな雰囲気とは、きっと俺が彼女に色んなことを言って困らせた事を言ってるのだろう
あの時は確か、「木下は他人と一線引いてる」とか何とか言ったはずだ
まぁ確かに、あの会話の延長のようなものなのかも知れない
国「……違いますよ、喧嘩ってほどじゃないですから大丈夫です」
岩「………なら良いけどよ」
及「て言うかさ、国見ちゃんもよく薫ちゃんの話してるけど
もしかして好きだったりする?」
金「え」
ニヤ、と笑う及川さんに金田一が思い切り動揺する
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