金田一

□あなたにだけは
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「木下、体調が悪いなら保健室に行ってこい」


『……すみません』




ガタン、と椅子を引いて席を立つと、木下はそのまま教室を出て行った


国見から話を聞いて数日、木下の体調はどんどん悪くなっているように見えた




季節に合わない花柄のマスクで顔が隠れているが、顔色が悪いのは誰が見ても明白だ










「金田一、国見」

「少し話したい事があるんだけど」



「「!」」




木下が教室を出て行ったのは授業中

その授業が終わった後、木下とよく一緒にいる女子二人が俺と国見に声をかけてきた


この二人は共に北川第一出身だから、俺と国見とは前からの知り合いだ








国「……何?木下のとこには行かなくていいの?」

「言われなくても後で行くわよ


それより最近の薫、ちょっと変なの、分かるでしょ」

「ずっと体調悪そうだし、なんか暗いし」

国「……まぁ、何となく見てれば分かる
顔色悪過ぎだし」

金「俺も…気になってはいるけど…」

「でしょ?

だからさ、色々と調べてみたんだけど」

国「調べた?」




そう、と力強くうなずく二人

何を調べたのか尋ねる前に、二人は怒りを露わにした顔で俺と国見を見た









「薫、ここ最近よく呼び出しされてるの、女の先輩に」

金「えっ?」

国「……それってまさか、及川さんのファン?」

「そう
下駄箱に嫌がらせの手紙入れられたり、呼び出して文句言われたり、結構酷いみたい

多分、この間のバレー部の合宿にいたからなんだろうけど


それもあって参っちゃったみたいなんだけど、いくら私たちが聞いても何も言わないのよ」

金「………。」

国「あー、ぽいな
木下は自分のことは話さないし、心配かけるのも嫌いそう」

「………何か、あんたが私らより薫を知ってるみたいな言い方なのが腹立つね」

国「えっ、何それ理不尽」




はぁ、とため息をつく国見

俺はというと、顔をしかめたままだ






「まぁいいや、それだけ伝えておこうかと思って

金田一は特に気になるでしょ?あの子の事」

金「え、は?!」

国「………お前、もう少しポーカーフェイスとか考えろよ…、小学生並みに分かりやす過ぎるだろ…」

金「うるっせーな!」

「金田一は昔から何かと分かりやすいからね、バレバレですよね」

「そうですよね、それに比べて薫は分かりにくい」

「それね、隠し事が上手いし考えてる事も分からん
あの子本当大人って言うか…」

国「……大人、ねぇ」

金「?」

「何よ国見」

国「別に

木下の事は分かった、俺らも頭に入れとくよ


まぁ、俺らが何かして解決するとも思えないけど」

金「国見!」





俺と女子二人が一緒に国見の頭をはたいた、さすがに痛かったらしく、国見がジロリと睨み上げる

だが付き合いが長いだけに、怖くない






そのまま二人は保健室に、木下の様子を見に向かった










***




教室に戻ってきた木下の顔色はまだ青く、笑顔にも覇気が無かった





「金田一くん、木下さん
ちょっと良いかな?」


「あ、委員長!ちわす!」

『こんにちは委員長、何でしょうか』




彼女が教室に戻ってきたのとほとんど同時に、園芸委員会の委員長が俺たちのもとにやって来た

委員会の話だろうと慌てて駆け寄ると、委員長は要件を言う前に木下の顔を見て首を傾げた






「……木下さん顔色悪いね、大丈夫?」

『大丈夫ですよ』

「………なら良いけど…

あのね、今日は三年が当番の日なんだけど、進路系の集まりがあって出来ないんだよね
だから代わりを頼みたいんだけど、大丈夫かな」

「あー…と、部活の当番があって『私がやっとくよ』

!」

「そう?まぁやる事はいつもみたいな水やりとかだけだから、お願いできるかな
三年が一年の次の当番を代わるって事で」

『はい、分かりました』

「じゃあお願いね」



それじゃあ、と委員長が手をひらひら振って教室を後にする


それを二人で見送った後、普通に席に戻ろうとする木下を呼び止めた


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