金田一

□”頑張って”
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インターハイ予選当日


店の手伝いを途中で抜けて、なんとか仙台体育館までやってきたが、中で迷子になった

友人らは先に中に入って場所取りをしてくれているらしい



初めて来た場所、しかも大きな体育館なんて縁もゆかりもなく、どこに何があるか全く分からなかった

周りには見覚えのない高校のバレー部のジャージを着た集団ばかりで、しかも全員男性

少し戸惑っていた







「あっれー!青城のマネちゃんじゃーん!」


『っ!』





ひょいっと突然視界に現れたのは、以前私が臨時マネージャーをした時に練習試合をして、その時に外の水道で私に声をかけてきた人だった


ドクン、と心臓が嫌な音を立てた



あの時は、この人を怖く感じて花吐き病の発作が起きたから、また発作が再発するのではないかと不安に駆られた






「どうしたのー?一人でこんなとこにいてさぁ!
あ、俺の応援だったりするー?そしたら嬉しいな〜!

こっちおいでよ!俺らの試合次なんだ!」

『あ、の、私は青城の応援に……っ!』

「良いから良いから!」

『や、やめてください…っ』

「そんなビビんなくてもいいじゃ〜んっ
可愛いね〜」




戸惑う私の腕を掴み、その人は私をぐいぐいと引っ張った

怖くて震える



やだ、怖い、誰か






怖くて目が霞んできたその時、視界に鮮やかなオレンジ色が入り込んできた










***





「あっれー!青城のマネちゃんじゃーん!」






影「……?」



次の烏野の試合までまだ時間があるため、外でクールダウンをしてからみんなで体育館に戻ってきた

その時に聞こえた「青城のマネ」の言葉



ぱ、と反射的にそちらに目をやると、そこには私服姿の女と、青城じゃない高校のジャージを着た男がいた




山「あれ、青城にマネージャーなんていたっけ?」

影「いや…いなかったはず」

日「あ!花屋の人!」

月「花屋の人?」



日向が”青城のマネ”を見て花屋の人だと声を上げる

その声に気付いた田中さん達も、そちらに目を向けた





西「むっ!龍!可愛い女の子がヤロウに絡まれて困っているぞ!」

田「おうそうだなノヤっさん!助けねば!」

澤「……確かにアレは知り合いでは無さそうだな

日向、花屋の人って言ってたけど知り合いなのか?」

日「おす!あの子は青城の近くの花屋さんで働いてた子です!
大王様たちとは知り合いだって言ってました!

ちょっと声かけてきます!」

西「翔陽に続くぞ龍ぅぅ!!」

田「おうけえええい!」

菅「あっ、こら!」



菅原さんの制止もむなしく、日向と田中さん西谷さんがあの女のもとに走る

だが何故か俺も引っ張られてしまった











日「おーっす!花屋の人だよね!!」


『っ?!


あ…!』


「あ?んだテメェ」




突如聞こえてきた明るい声に顔を上げると、いつだかお店に来てくれた烏野高校のバレー部の男の子がいた


その後ろにいる坊主頭の人と背が低い人が、私の腕を掴んでいたあの人を追い払ってくれた








『っ、ありがとう…!助かりました』

日「追い払ったのは田中さんと西谷さんだから、俺は何もしてないよ!
ところでどうしてここにいるの?マネージャーなの?」

『ううん、今日は青城の応援に来ただけなんだけど…

……恥ずかしながら迷ってしまって…、友達が青城が試合をやるコートの応援席を陣取ってくれたらしいんだけど、そこまでたどり着けてないの…』

日「青城かー、影山、どこか知ってる?」

影「………青城の集団ならさっき見た、及川さんも岩泉さんも金田一も国見もいた」

日「じゃーお前連れてってやれよ!」

「『えっ』」



ばし、と日向が俺の背中を叩く

何でだよ、という顔を日向に向けると、日向は「何だよ!」と反抗してきた








日「俺青城の場所知らねーし、お前知ってるなら連れてってやれよ!
試合はまだなんだしよ!」

田「そうだぞ影山!男なら紳士であれ!」

西「可愛い女の子を放っていくなんて男のすることじゃねえ!」

澤「影山、まだ試合まで時間もあるし、行ってこい」

影「えっ、マジすか

…分かりました」

『……なんかすみません』



ぺこ、と頭をさげるその人に目を向け、あっち、とだけ言って歩き出した

後ろから日向の「無愛想だな!」という文句が聞こえた

あとでシメる


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