金田一

□期末テスト
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インターハイ予選も終わり、青城バレー部は県内二位という結果で終わった

それでも十分凄いことなのに、みんなは悔しがっていた




けど、その悔しさをバネにまた練習に取り組んでいるらしい


純粋にすごいと思った


私にはきっと出来ないことだから







そして季節は夏を迎え、ある時期が訪れようとしていた








『勉強を教えて欲しい?私に?』

「頼む!
赤点食らうと部活出れないんだ!」




ぱん、と手を合わせて私に頭をさげる金田一くん

そう、ある時期とは期末テストの時期のことだ


高校に入って初めての期末テストで、私も最近勉強を始めた





『でも私、教えるとかはできないと思う…』

「教えるとかじゃなくて、普通に一緒に勉強すれば良いじゃない

ね、国見」

国「そうだね

お前ら付き合ってるんだし、一緒に勉強すれば良いじゃん
で、分からなかったら二人で相談みたいな」

『私でお役に立てるかどうか…』

国「いや、お前なら大丈夫
少なくとも金田一よりは頭良いと思うし」

金「事実だけど!言われると悲しい!

で、木下、頼めないか?」

『………一緒に勉強してくれる相手がいるのは嬉しいけど、本当に教えるとかは無理だと思う』

金「じゃあ一緒に勉強してくれ!頼む!」

『………分かった』

金「!

サンキュー!」



にっ、と嬉しそうに笑う金田一くんに胸がきゅんとなる

この笑顔に私は弱いのだ



バレー部は期末テストが終わってすぐに遠征があるらしく、その遠征と赤点の補習が重なっているらしい

是が非でも赤点を免れたいらしい金田一くんは、こうして私に頼むことにしたらしい





『他のバレー部の一年生には頼まなかったの?』

国「頼んでたけど、みんな彼女がいること知ってるから”そっちに行け”って追い払われてた」

「男バレ1年心狭いな」



けたけたと笑う友人たちに、国見くんも口元を緩めた









***




月曜日の放課後

いつもは部活がない金田一くんと一緒に帰るのだけど、今日からは違う




『じゃあ始めようか』

「おう」




クラスメイトが帰った静かな教室に、ノートをめくる音やペンを走らせる音がする


私は苦手な教科を重点的に勉強していた






「なぁ、この問題さ」

『ん?』




教科書にある問題を解いていると、途中で解き方が分からない問題が出てきた

それで木下に尋ねようと、向かい合って座ってる彼女に声をかけた






「これって何でこうなるんだ?」

『これはね…』





木下は自分では、頭は良くないし人には教えられないと言っていたが、彼女の説明は分かりやすかった

それに、俺がどの教科の事を訊いてもすぐに答えてくれた







『……だから、ここでこの反応式が…』




木下が分かりやすいようにと身を乗り出して教えてくれる

白くて細い指が教科書の上を行ったり来たりしている






『……ってなるんだけど、分かった?』

「!

あ、おう、ありがと」

『どういたしまして』



にこりと小さく笑い、また彼女も自分の勉強に取り掛かる

はらりと机に垂れる髪を耳にかける動作が、やけに目についた




それに、なんだろう、いい香りがする

部室にあふれる制汗剤とか、洗剤の匂いじゃない

これは






「花の香りか」

『えっ?』

「あ、いや悪い、邪魔して」

『そんな事ないけど、花がどうかしたの?』

「……木下からいい香りがするから、何の香りかと思って」

『あぁ……、毎日花に囲まれてるから、染み付いてるのかも

ちょっと恥ずかしい』

「そうか?
いい香りだし、俺は好きだ、け、ど……」

『……そっか、なら良いや』



少し驚いて見せた後、恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる木下

そのまま妙な沈黙が続いてしまったが、気まずくは感じなかった








「木下、何度も悪いんだけど、ここ聞いていいか?」

『うん?どこ?』

「ここ、数学なんだけど」

『えっとね……』





しばらく考え込むと、あぁ、と口元をゆるめた

そしてまたスラスラと、分かりやすい答えの求め方を教えてくれる




彼女の頭の良さに、今日改めて驚いた


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