金田一
□夏祭り
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夏休みに入って一週間ほど、私は実家のお店のお手伝いで、ほとんど毎日お店に立っていた
そんな昼下がり、今日は金田一くんと一緒にスポーツショップに行く約束をしている
部活終わった、今から行く
店番中に届いたメールを見て、お母さんに声をかけて一度部屋に上がった
***
「ちわす!」
ちょうどお店に降りた時、聞き慣れた声が聞こえてきた
お母さんも楽しそうに「いらっしゃい、金田一くん」と話している
『金田一くん!部活お疲れ様』
「おう、もう行けるか?」
『うん
行ってきます』
「はい、行ってらっしゃい」
お母さんに見送られ、お店に来ていた常連さんにも挨拶をしてから金田一くんと出る
ジリジリと照りつける太陽が眩しい
『スポーツショップでは何を買うの?』
「新しいサポーター、あとついでに部の買い出しも頼まれて
悪いな、こんなのに付き合わせて」
『一緒に行きたいって言ったのは私だよ』
謝んないで、と笑う木下に笑いかけ、店に向かう
今日は日差しが強いし、体育館の中もすごく暑かった
午前中だけの部活と言っても、今日はかなりキツかった
けど木下との予定があるから、そのために頑張れた、と思う
店に着くと、こういったスポーツショップとは縁が無いと言っていた木下は、珍しそうに周りを見ていた
『大きいね、ここ』
「ここら辺じゃ一番でかいと思うよ
あ、あっちがバレーのコーナーなんだ」
行こう、と楽しそうに笑う金田一くんの後を追う
バレーに関することになると、金田一くんは本当によく笑うなぁと思う
バレーに関するグッズが置いてあるコーナーに行くと、彼は目当てのサポーターを見つけたらしく、カゴに入れていた
あとは部活の買い出しだ、と金田一くんがキョロキョロと首を動かしている
ドリンクの粉とか、テーピングとか、絆創膏、湿布、その他もろもろ、色々と頼まれたらしい
「……あれ、無い」
『何が?』
「いつもうちの部で使ってるメーカーがあるんだけど、それが無いんだよなぁ…、品切れ中かな…
ちょっとここで待っててくれ」
『うん』
バレーに関することは分からないから、大人しく言われた通りに売り場で待つことに
お店の人に聞いてくる、とその場から金田一くんが離れていった
***
数分後、こんなのも売ってるのか、と売り場を眺めていると、近くに人が来た
金田一くんが戻ってきたのかとそちらを振り向くが、そこには思わぬ人がいた
『あ、この間の』
「?
………あ、金田一の彼女…」
セッター魂、と描かれたTシャツを着た男の子
彼はいつだかお店に来てくれた、烏野のバレー部の男の子だ
『……あ、この前は案内してくれてありがとうございました』
「あ?
……あぁ、インハイ予選の時か…
別に、大したことしてないんで」
『でも助かったから
買い物ですか?』
「うす
……金田一は?」
『探し物がなかったみたいで、お店の人に聞きに行ってます』
「ふぅん……
あ、さっきこんなん貰ったんスけど、あげます」
『?』
そう言うと、チラシのようなものを私に渡してくれた
何だろうと受け取ると、夏祭りの文字が
『夏祭り…』
「うちは部員みんなで行くらしいんで、それあげます
……金田一とでも、行けば良いんじゃないスか」
『……行けるかなぁ、忙しそうだし
でも、ありがとうございます』
ニコ、と笑いかけると、その人は驚いたように目を見開いた
けどすぐに目を逸らし、別に、とぶっきらぼうに言う
買いたいものが決まっているのか、いくつか売り場から商品を取ると、じゃ、と頭を下げてどこかへ行ってしまった
不思議な人だなぁと思いながらチラシを見ていると、木下、と声をかけられた
『あ、金田一くんおかえりなさい
探し物は見つかった?』
「おう、お店の人に言ったらわざわざ在庫出してくれたよ
いつも贔屓にしてくれてるから、って」
『さすが青城バレー部』
「な、すげぇや
……で、木下は何持ってるんだ?そんなの持ってたか?」
『あ、これね、烏野の人に貰ったの、さっき』
「烏野?
…ってまさか……影山か?」
『あ、そうその人、買い物に来てたみたいで
もう行っちゃったけど』
「……そうか」
キョロキョロと周りを見回す金田一くん
影山くんが気になるのだろうか
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