金田一

□最後
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夏が終わり、二学期


冬を目前に控えたこの時期に、ついに春高予選が開催された



宮城県代表として全国にいけるのは、たった1校

その狭き門は、素人の私から見ても大変な道のりだと分かる








『見に行ってもいいの?』

金「………今さら来るなとか言わねーって」

国「むしろ木下が来ないと金田一本領発揮できないから」

金「おいっ!」



バシッ、と金田一くんが国見くんの背中を叩く

いて、と小さく呟くと、国見くんは「事実だろ」と不服そうに言った






『じゃあ行く、応援』

「! おう、応援頼んだ」

『うん』


に、と明るく笑う金田一くんに笑いかける

すぐ横で国見くんが小さな声で「爆ぜろ」と言った









***




「で、名前はどうなったんだよ」

「…………。」

「名前呼び果たせずか

ヘタレらっきょ」

「うっせー!」



ほっとけ、と不機嫌な顔で返す金田一

こいつが言うには、何度か名前で呼ぼうとチャレンジしたらしい
けど、本人の顔を見ると恥ずかしくなって、結局呼べないのだとか





「それをヘタレと言うんだよ」

「分かってるよ!」




放課後の部活が終わった後、部室で着替えていても国見はそう言って俺を笑う

半ばヤケになりながら国見に反抗していると、自主練を終えた三年生が部室に戻ってきた






及「あれ、今日は二人とも早いね」

国「今日木下が学校に残ってるらしいです
用があるとかで」

松「金田一と国見で送ってくの?」

国「いや、俺は普通に帰ります
今日は用があるんで」

花「じゃーこのあと木下さんがこっち来るのかな?」

金「そうっす!」


先輩と話しながら携帯を見る

先ほど送った「部活終わった」のメッセージに、「部室の方まで行くね」と返事が来ていた


早く着替えないと、とワイシャツの袖に腕を通していると、及川さんがおもむろに口を開いた






及「そう言えば、今度の春高予選に薫ちゃんは来るのかな?」

金「あ、来るって言ってました」

及「良いね〜

ああいう影から支える、みたいな控えめな女の子って良いよね〜

俺もああいう彼女欲しいな〜」


はーあ、と大きくため息をつく及川さん

及川さんの言葉に、胸がざわついた







考えるより先に、口が動いていた









***



金田一くんから部活が終わったという連絡が入ったので、荷物をまとめて校舎を出る

着替えたり荷物をまとめたり、時間がかかるだろうから、少しゆっくり歩いた




部室棟に近づくと、バレー部の部室の明かりが煌々と光ってるのがよく分かる


運動部は遅くまで大変だな、といつも思っていることをまた思っていると、部室棟の下にある水道に、見知った顔を見つけた







『岩泉さん、お疲れ様です』

「あ?

あぁ、木下か、こんな時間まで何してんだ?」

『少し用があって残ってたんです

用事が少し早く終わったから、バレー部の活動が終わるまでは勉強してました』

「そうなのか

金田一なら部室だろ、俺も戻るとこだし一緒に行くか」

『え、そんな、邪魔しちゃ悪いのでここで待ってます』

「んな暗いところで待ってたら金田一が心配するぞ

まぁ着替え中だったら…、すぐ外で待ってもらうかもだけど
とりあえずそんな暗いところよりはマシだろ、行くぞ」



来い来い、と岩泉さんに手招きされ、おとなしく後を追って部室棟の外階段を上る

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