宍戸さん

□ペア結成
1ページ/3ページ





翌朝登校して席に着き、小テストの勉強をしていると、机の前に誰かが立った


誰だろうと顔を上げると、一度隣の席になった事のある向日がそこにいた






『……え、何?』


「ちょっと顔貸してやれ、あそこの目付き悪い奴に」


『あそこの目付き悪い奴?


………って、あの人?』





向日が指差す方に顔を向けると、一人の同級生がいた

何となく見覚えがある

多分男子テニス部の人だろう



何で私?と向日に尋ねると、それはそれは驚いた顔をされた







「え、お前マジでエキシ出ないつもりなのか?!

とりあえず宍戸んとこ行ってこい!」

『え、わ、分かった』




どうやら彼は宍戸くんと言うらしい

そして向日の言ったエキシという言葉、つまり彼は、もしかしたらミクスドのペアなのだろうか











「!

瀬戸雫か?」


『……そうだけど、私に何か?』


「あっ、雫ちゃーん!
ひっさしぶりー!」


『ジロちゃん…、何で起きてるの
今日は晴れの予報のハズだけど
雨降っちゃうじゃん』


「失礼だC!!」




教室を出て、向日が言ってた人物に近寄る

私に気付いたその人は、眉をひそめながら私の名前を確認した


その質問にそうだと返すと、彼の後ろからジロちゃんが現れた



ジロちゃんは一年生の時に同じクラスだったため、親しい


そんなジロちゃんに軽口を叩いていると、目付きの悪い彼が「おい」と口を挟んだ








「……用があって来たのは俺なんだけど」

『あ、ごめん

で、君だれ?私に何の用?』

「………ジローと同じクラスの宍戸だ

元男子テニス部、で、エキシビションマッチに出る」

『!

宍戸、ね
聞いた事ある


それで、用件は?』



腕を組み、宍戸くんとやらを見る

すると彼は不機嫌そうな顔になるが、しぶしぶ口を開いた







「単刀直入に言うぞ

今年のエキシビションマッチに出てくれ


んで、俺とミクスドに出て欲しい」


『………なるほど、私のミクスドのペアが君なんだ

ひとつ聞いていいかな』


「何だ?」


『私が出ないとしたら、君はミクスドだけ出れない事になるね

でも男子のトーナメントには出れる


宍戸くんが私のとこに直談判する理由は何かなと思って』


「………………跡部のクソヤローが、ペアの連帯責任がどーのって言っててよ

お前が出ないなら俺のエキシ出場も考え直すんだと」


『うわ』



跡部らし、と苦笑いと嫌悪を織り交ぜた微妙な顔をする瀬戸という人物

昨日見た時も思ったが、こいつは跡部が苦手らしい










『思い出した、君は男子のD1の人か

ダブルス1の君がエキシに出ないのは、確かに男子テニス部にとっても女子にとっても痛手となるわけだ』


「テニス部とか女子とかはどーでもいい

ただ単に試合に出たいだけだ




本当の、中学最後の試合な訳だしな」


『!』





に、と笑う宍戸くんに思わず目を見張る


何となく、その笑顔が印象に残った













『………分かった』


「?」




宍戸くんとジロちゃんが首を傾げる

その二人に向き直り、に、と笑った





蓮二の言う通り、エキシビションマッチで区切りを付けるのも、良いかも知れない











『エキシビションマッチ、出るよ』







受験とエキシビションマッチの両立は大変だろう


だが、私が後悔しない方はこの道だ












『よろしく、宍戸クン』


「……こちらこそ、よろしく」





他人行儀な挨拶をしたところで、始業のチャイムが鳴り響いた


じゃ、とそこで話を区切り、教室に戻る


途中話かけてきた向日にエキシビションマッチに出る事を告げると、負けないからな!と宣戦布告された







この感じが楽しい

夏に戻ったようだ






.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ