宍戸さん

□距離感
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エキシビションマッチの練習が始まり、昔のように外で走り回る時間が増えた


だがそれと並行して受験勉強もこなさなければならないため、ハードな毎日を過ごしている


寝る間も惜しんで勉強し、学校では勉強とテニスの両立

少し疲れていたが、立海進学を隠している手前、それを悟られるわけにはいかなかった







「瀬戸ー、フォーメーションの事なんだけどよ」

『……あ、何?』

「…いや、フォーメーションの事なんだけど…


おい、顔色悪くねえか?」




教室でぼんやりと窓の外を眺めていると、宍戸が入ってきて私の顔を覗き込んだ

だが私の顔色を見ると、眉間にシワを寄せた





「……体調悪いんじゃねーの?」

『大丈夫、でフォーメーションの話だっけ』

「……………ちょっと顔貸せ」

『え?』




腕を引っ張られ、思わず立ち上がる

そのまま宍戸は私を引っ張って教室から出た








「おっ宍戸……と瀬戸?
どこ行くんだよ?」

「あ、雫ちゃんと手ぇ繋いでるC!」

「岳人、こいつ保健室に連れてくから次の時間先生に適当に言っといてくれ」

「えっ?お?おう」

「雫ちゃん具合悪いの?」

『えっ?いや、大丈夫だけど「大丈夫じゃない」

ちょっと宍戸…』



ぐいぐいと引っ張られる途中で、休み時間で遊んでいたのか向日とジロちゃんに遭遇した

私たちを見て不思議に思ったのか、二人が話しかけてきた



必要事項を手短に告げ、驚いてる二人を無視して私の腕を引く宍戸に声をかけるも、彼は聞く耳を持たず





「大丈夫じゃねえだろ、顔色悪いし
いつもと違う」

『少し疲れてるだけだよ』

「良いから行くぞ」




ズルズルと引きずられるがままにたどり着いた保健室

中に入って事情を話し、私を保健の先生に託すと、ギロ、と私を振り返った






「いいか、ちゃんと休めよ、具合が良くなったら教室に戻れ」

『大した事ないってば』

「良いから休んでろ!」



びし、と指をさし、保健の先生に会釈してから宍戸が出て行った






「優しい子で良いわね、彼

じゃ、君は寝ていなさい」

『え、でも授業が…』

「典型的な寝不足よ、夜遅くまで起きてるんじゃないの?

………あぁ、もしかして外部受験を控えてるのかしら
受験勉強も大切だけど、無理して倒れたら結局勉強出来ないわよ
配分はきちんとしないとね」

『………。』



保健の先生に優しく言われ、ベッドに行くよう促される

おとなしく横になると、確かに眠気が襲ってきた




エキシビションマッチの練習が始まってから、放課後も遅くまでテニスに明け暮れ、勉強時間は遅くなっている

立海に特待生で入学するための勉強を疎かにするわけには行かず、時間を遅くして勉強をしていたせいで、確かにここ最近は寝不足がちだった




すーっと意識が沈んでいくのを感じながら、眠りに落ちた









***




数分前ー…


向日と芥川は、少し怒っている宍戸と、宍戸に引っ張られている雫の背中を見送っていた





「…ジロー、瀬戸の具合、悪そうに見えたか?」

「……分かんない、いつも通りに見えたC!」

「だよなぁ…、よく分かったなアイツ」

「仲良しなんだね!」

「そだなー
最初はどうなるかと思ってたけど、何だかんだ最近はよく一緒にいるし、案外良いコンビなのかもなー」

「あの二人のミクスド、見るの楽しみ!」

「はぁー??勝つのは俺らのペアだし!!」

「それは分かんないC」

「てめこのジロー!」



きゃっきゃと騒ぎながらそれぞれの教室に戻っていく


次の時間になる直前に宍戸はジローの教室に戻ってきたが、向日の教室に雫は戻ってこなかった


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