宍戸さん

□目撃
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エキシビションマッチの練習を始めて2週間、 シングルスの練習に問題はなく、ミクスドもある程度完成してきた

休み時間の度に宍戸とコートに行き、テニスをする毎日だ









『え、宍戸って髪長かったの?』

芥「やっぱり知らなかったんだねー!」

向「今はあんなんだけど、夏前まではめっちゃ長かったんだぜ!
お前よりもずっとずっと長かった!」

『へえ…』




コートで同じように練習をしていたジロちゃんと向日が、休憩していた私のもとに来て宍戸の話をした

何でも宍戸は、三年の夏ごろまでは背中くらいまで髪が長かったらしく、いつもポニーテールをしていたとか

短髪の今の宍戸しか知らない私はその話を聞き、少し驚いた





『想像できない……』

向「あ、部室にその頃の写真あるんじゃね?」

芥「確かに!探してくるC!」



ジロちゃんと向日の二人は立ち上がり、男子テニス部の部室に向かって走り出した

どうやら写真を見せてくれるらしい



2人の背中を見送り、そのまま休憩を続ける

宍戸は先生に呼ばれてるとか何とかでコートにはおらず、目の前のコートでは滝くん達がミクスドの練習をしていた







芥「雫ちゃーん!写真あったCー!」



ストレッチでもしようと柔軟体操をしていると、ジロちゃんと向日がバタバタと走ってきた

その手には写真が確かにあり、ほら、と見せてもらった





『………え、これ?』

向「そうそう、それが宍戸!」

芥「髪の毛長いでしょー!」



二人が見せてくれた写真は、三年生になったばかりの頃の春の大会の集合写真だった

ジロちゃん、向日の間にいる目付きの悪い男の子には見覚えがあったが、目を見開いた



今の短髪ではなく、確かに長髪で頭の後ろで髪を結んでいた


ずっとショートヘアを貫いてきた私よりも、ずっとずっと髪が長い







向「あっ、宍戸!」



写真を見て驚きを隠せない私を見て、ジロちゃん達が楽しげに笑っている

そんな中、用事を終えたらしい宍戸がコートに戻ってきた




宍「遅くなった……って、何見てんだ?」

芥「宍戸が髪長かった頃の写真を雫ちゃんに見せてるC!」

向「瀬戸がさっきから衝撃で固まってるぜ〜」

宍「は?」





ひょい、と宍戸が雫の手元を覗き込み、あー、と声を漏らした




宍「その写真か」

『……宍戸、私より髪長かったんだね
しかも綺麗』

宍「綺麗って…」



ストン、と隣に腰掛け宍戸がケタケタ笑う

いつの間にか、向日とジロちゃんはいなくなっていた




じーっと宍戸の写真と隣にいる宍戸とを見比べる



「……んだよ、何か文句あんのか」

『ううん、髪が長いのも似合ってる』

「っ、な、に言ってんだよバカ!」

『えっ、何でよ褒めてるのに

ぎゃ』



ばし、と宍戸の帽子をかぶらされ、視界が狭まる

帽子をかぶったまま宍戸を見上げると、短い髪の間から赤く染まった耳が見えた








『……私も伸ばしてみようかな』

「良いんじゃねーの?似合うと思うぜ」



自身の短い髪をいじりながら独り言のようにそう呟くと、宍戸は振り返って笑った

その言葉と笑顔に、じわりじわりと頬が熱を持った









***





順調に練習を積み重ねているある日の休日

エキシビションマッチに備えて備品を買おうかなと蓮二に話すと、俺も行こう、と乗ってきた



『蓮二も何か買うの?』

「新しいガットが欲しくてな、一緒に行っても構わないか?」

『今さら許可なんて取らなくていいよ、行こうか』

「あぁ」



神奈川の家を出て、二人で東京に来る

氷帝の近くに大きなスポーツショップがあるので、そこに行こうと蓮二を連れてきた

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