宍戸さん

□有終の美
1ページ/3ページ





エキシビジョンマッチ

男女テニス部のパフォーマンスは全学年選抜トーナメントだ

各学年から選抜された選手でトーナメントを行い、優勝を競うもの

それに加えて、ミクスドトーナメントだ



私は三年生選抜としてシングルスのトーナメントに出場し、そして決勝まで勝ち進んだ






決勝の相手は、二年生の現部長
つまり後輩だ







氷帝学園の先輩として最後に出来ることは、ここで後輩に真正面からぶつかること

そして、次のテニス部をさらなる高みに連れて行ってくれるよう、引導を渡すことだ








「女子の決勝は、やはりお前が残ったか」

『………そっちは跡部が残ったんだ』

「当然だろ」



フン、と自信ありげに笑う跡部にあっそと返し、ぼんやりと人が賑わうテニスコートを眺める


決勝まではまだ時間があるから、各自が好きなように時間を潰している

私はここで休憩してて、跡部も何故かここにいる


2月のこの時期にテニスコートにあんなに人が集まることもないし、何より私にとっては、もうこの景色を見ることはできないのだ








「お前、氷帝の高等部に進学しないそうだな」

『!

………何で知ってるかなぁ』

「俺様は生徒会長だぞ」

『関係ないでしょそれ』




膝を抱え、ぼんやりとテニスコートを眺めたままそのままでいると、跡部は口を閉ざす


私も特に話すことがないから、黙ったままでいた








「宍戸には言ったのか?」

『……まだ、でもエキシビジョンマッチが終わったら、言うつもり』

「なんだ、言うのか、意外だな

お前はてっきり、宍戸に何も言わずに卒業すると思っていた」

『………最初はそのつもりだったけど、気が変わった



この数週間、宍戸とミクスドの練習するの楽しかったから

それにあいつ、私と高校でもテニスできたら、って言ってくれたけど、私はその気持ちを裏切ることになるから


ちゃんと、言わないといけない』




すく、と立ち上がり、腕を伸ばしてストレッチを始める

シングルスの決勝までもう少しだ








『ま、その前に、氷帝の先輩として最後の後輩指導をしてこようかな

そっちも日吉くんに最後の指導?』



いまさらだが、男子シングルスの決勝に勝ち進んだのは二年生の日吉くんである

つまり決勝のカードは、跡部vs日吉くんだ







「アーン?俺様がいまさら指導することなんざねぇよ

もう全部、教えることは教えたからな」

『………意外と後輩思いなのね』

「一言余計だ

おら、時間だ、行くぞ



お前が氷帝学園の生徒としてあのコートに立つ、最後の試合だ」

『………うん』



ふ、と笑って立ち上がり、ラケットを持ってコートに向かう

ギャラリーにはテニス部のメンバーも並んでおり、その中に宍戸の姿を見つけた


ラケットを軽く持ち上げて挨拶をすれば、宍戸は拳を握りしめ、私に向けた


それだけで、自信が生まれるような気がした


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ