宍戸さん

□遅すぎた自覚
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ある日、氷帝学園内の進路指導室の前をたまたま通りがかった

そしたら扉が少し開いていて、中から三年の進路指導担当の教師の声と、聞き覚えのある女生徒の声が聞こえてきた







「………の成績なら試験は問題ないだろう、テニスの実技試験はどうだ?」

『………練習は続けていますけど』

「全国大会に出た実績もあるんだ、そんなに構えなくて大丈夫だろう
それにエキシビジョンマッチと同時進行できちんと勉強もしていたしな

ま、先生はテニスのことは詳しくないから、あまり言えないんだけどな」



はは、と笑う先生の声がしたかと思ったら、ガラ、と進路指導室の扉が開いた





『!』

「あ」



失礼します、と進路指導室の中に向かって頭を下げ、瀬戸が後ろを振り返る

そして廊下の窓に背中を預けていた俺をみて、驚いた顔をした






『………なんか、久しぶりな感じがする』

「……エキシビジョンマッチ終わってからは会ってなかったしな、つっても数日間だけだけど」

『毎日顔合わせてたから、会わないと違和感ある』


ふ、とゆるく笑う瀬戸の手には高校の資料や冊子が握られており、その資料に”立海大付属”の文字が見えた







「………え、立海?」

『ん?

あぁ、そう、立海を受けるつもり』

「何でまた……」


氷帝学園も立海大付属も、高等部大学部があるエスカレーター式の学校だ
そのシステムは同じなのに、なぜ立海なのか

思わず出た疑問に首を傾げれば、瀬戸は「歩きながら話そう」と苦笑いを浮かべた







『氷帝に通い始めたのは中学からなんだ、それまでは蓮二と同じ神奈川の小学校に通ってた』


ガサ、と立海の資料をわずらわしそうに抱える瀬戸は、ぽつりぽつりと話を始めた




『私が氷帝に通うことになったのはまぁ、親の意向という感じで、設備も充実してるし規模も大きいし良いんじゃない?ってことで通うことになったんだ

でも、うちはそこまで裕福な家庭ではないからね
元々高校は外部を受けるつもりでここに入学した

で、蓮二の話を聞いてて、立海が良いんじゃないかってことになったの』



ガヤガヤと生徒たちのざわめきが聞こえてくる
歩いているうちに、教室の近くまで来ていたようだ







「………試験、いつなんだ?」

『立海の試験は来週末
テニスの特待生狙いなんだ、学費免除とか色々あるし』

「そっか、頑張れよ」

『………うん、もちろん』




そう言って笑った瀬戸に少しの違和感を持つも、彼女の教室に着いてしまったからそこで別れた


今の笑顔が少し、疲れているように見えたのだ



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