日吉
□彼の私の第一印象
1ページ/3ページ
中学2年生の初夏、仲の良い友人の強引な誘いを断れず、私はテニス部の関東大会を観戦しに来た
クラスメイトの鳳くんがテニス部で、なおかつレギュラーだと言う事をその時に知るくらい、私は氷帝のテニス部に興味が無かったのだ
「ウォンバイ、越前リョーマ!」
キャーキャーといちいちうるさい氷帝の女生徒や、氷帝コールなるものを大声で叫ぶテニス部にウンザリしていた私は、テニスコートの周りを囲むギャラリーから少し離れた場所に避難していた
もう帰ろうか、なんて考えていたときに聞こえてきた試合終了のコール
ふとテニスコートに目をやれば、氷帝の生徒たちは悲しみ、青学の生徒たちは歓喜していた
それで分かる氷帝の“敗北”
『(……負けたんだ)』
ありがとうございました、という選手たちの挨拶が聞こえてくると、観戦していたギャラリー達はゾロゾロとテニスコートから離れ始めた
案外あっさりしているんだな、とギャラリー達を冷めた目で見つつ、誘ってきた友人を探しに足を進める
その時、テニスコートの片隅に氷帝の選手が集まっているのが目に入った
『…………!』
1人の選手が輪の中にいるのが見えた
周りにいる氷帝の選手は、どうやら彼を慰めているらしい
輪の中で下を向き、腕で顔を抑えている少年
その彼は何度か頷くと、涙をぬぐって顔を上げた
『!』
………綺麗なヒトだと思った
涙を目に溜めながらも力強い瞳を向け、凛々しい表情を崩さないその男の子が
”次”を見据えているその瞳が
あんな人がいたんだと、感動を覚えたのだ
「………あ、瑞乃!
もう、どこに行ってたのよ!試合の途中でいなくなるし!探したのよ!」
『ごめんね
……ねぇ、あの男の人、先輩?』
「え?
………って、日吉くん?アンタ試合観てなかったの?
さっき試合して負けちゃった、日吉若くん
彼は2年生よ」
『………へぇ』
”涙を流す綺麗な男の子”
ーーーーそれが私の、彼に対する第一印象
.