日吉

□彼の私の第一印象
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中学2年生の初夏、仲の良い友人の強引な誘いを断れず、私はテニス部の関東大会を観戦しに来た




クラスメイトの鳳くんがテニス部で、なおかつレギュラーだと言う事をその時に知るくらい、私は氷帝のテニス部に興味が無かったのだ















「ウォンバイ、越前リョーマ!」







キャーキャーといちいちうるさい氷帝の女生徒や、氷帝コールなるものを大声で叫ぶテニス部にウンザリしていた私は、テニスコートの周りを囲むギャラリーから少し離れた場所に避難していた



もう帰ろうか、なんて考えていたときに聞こえてきた試合終了のコール






ふとテニスコートに目をやれば、氷帝の生徒たちは悲しみ、青学の生徒たちは歓喜していた




それで分かる氷帝の“敗北”









『(……負けたんだ)』








ありがとうございました、という選手たちの挨拶が聞こえてくると、観戦していたギャラリー達はゾロゾロとテニスコートから離れ始めた


案外あっさりしているんだな、とギャラリー達を冷めた目で見つつ、誘ってきた友人を探しに足を進める






その時、テニスコートの片隅に氷帝の選手が集まっているのが目に入った











『…………!』









1人の選手が輪の中にいるのが見えた




周りにいる氷帝の選手は、どうやら彼を慰めているらしい


輪の中で下を向き、腕で顔を抑えている少年




その彼は何度か頷くと、涙をぬぐって顔を上げた
















『!』





………綺麗なヒトだと思った






涙を目に溜めながらも力強い瞳を向け、凛々しい表情を崩さないその男の子が



”次”を見据えているその瞳が










あんな人がいたんだと、感動を覚えたのだ













「………あ、瑞乃!
もう、どこに行ってたのよ!試合の途中でいなくなるし!探したのよ!」


『ごめんね

……ねぇ、あの男の人、先輩?』


「え?

………って、日吉くん?アンタ試合観てなかったの?

さっき試合して負けちゃった、日吉若くん
彼は2年生よ」


『………へぇ』















”涙を流す綺麗な男の子”




ーーーーそれが私の、彼に対する第一印象



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