商品4
□400キリ番
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自分は最高に幸せ者だと思う
「先輩・・・いい加減に機嫌を直して下さい」
俺の呼びかけにビクッと肩を揺らすも
こちらを見ようとしないその人に思わず苦笑いがこぼれる。
「ねぇ、霧野先輩・・・」
「なんで・・・」
「はい」
「なんで俺が女の恰好しなくちゃいけないんだああぁぁぁ!!!」
「それは・・」
やっと喋ってくれた事にホッとしつつ、
叫びながら立ち上がった女性・・・いや霧野先輩の姿に目を映す。
黒の布地に白のレースがあしらってあるワンピースに、モノクロのニーソ。
靴は両サイドに小さな羽がついてある白いパンプスで
普段は二つに結ってある淡いピンク色の髪が今は肩までまっすぐ下ろされており
耳の上には白いバラのヘアピン・・・俗に言うゴスロリファッションだ。
「似合ってますよ?」
「似合ってたまるか!大体なんで男の俺が!」
「それは、霧野先輩が賭けで負けたからです」
俺の言葉に「うっ」と言葉を濁す霧野先輩。
「た、たしかにテストの点でお前が俺より上なら何でも言う事聞くって言ったけど・・だからってなんで女装なんだよ!」
言いながらスカートの裾をギュッと握る姿に思わず自分の中の何かかが湧き上がるがそれを抑えつつにっこり笑顔で返す。
「負けは負けです。
それとも霧野先輩は【男と男の約束】を破るんですか?」
男と男の約束を強調したのは勿論わざとだ。
こう言えばこの先輩はむきになるに決まっている。
「っ〜!分かった!
今日一日はこの服で遊んでやる。俺も男だ。一度決めた約束は守る。」
ほらな。
まぁ、そんな所も愛らしいわけで・・・
「で、どこに行くんだ?」
首をコテンッと傾けて聞いてくる霧野先輩。
・・・たまにこの人はわざとやってるんじゃないかと思ってしまう程男のツボをついてくる。
「そうですね・・実は前からどうしても欲しい物があって、
でも売ってるの隣町なんです。駄目ですかね・・」
買いたいモノなんて本当は無い。
だけど少しでもこの愛しい人と一緒に居たいから言っただけ。
「どうしても欲しいかのか?その、隣町まで買いに行くくらい・・」
「はい。凄く欲しいモノなんです」
欲しい何て嘘だ。
でもここで引いたらせっかくのデートが直ぐに終わってしまう。
「・・・」
「・・・駄目ですかね」
やっぱり隣町は強引過ぎただろうか?
「あの・・」
「そうか・・じゃあ、それ買いに行くぞ!」
俺がやっぱり近場にしようと言おうとした瞬間、
ニカッと笑って霧野先輩は立ち上がった。
「良いんですか?」
急に立ち上がった事に驚いたが
それよりもあれだけ嫌がっていた女装で隣町まで行くと言ってくれた事に驚いた。
「だって剣城はそれがどうしても欲しいんだろ?」
「はい」
欲しいなんて思って無い。
だけどその純粋な瞳で見つめられると欲しいモノがある錯覚くら起こしてしまいそうだ。
「なら買いにいくぞ!ほら、立て!」
急に元気になった霧野先輩は、俺を立たせようと手をひっぱる。
「霧野先輩・・・俺と今日はこのまま手をつないでいてくれませんか?」
繋がれた手を強く握り返して言うと
霧野先輩は笑顔のまま固まった。
「・・・」
「・・・」
「嫌・・・ですか?」
やっぱり男同士だから嫌かと思い、少ししょんぼりとして手を離そうとした時・・
ガシッ
「!」
「手!繋ぐんだろっ!ほらいくぞ!」
「っ」
荒い言葉とは裏腹に、優しく握り返されたその手と後姿からかいま見える真っ赤に染まった耳に俺は笑顔を隠せずにいた。
あぁ、やっぱり幸せ者だ。
END
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