商品4

□700キリ番
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一週間で一番賑わう日曜日のデパート、
その3階にあるファンシーショップに
俺こと剣城京介は立っていた。

なんで俺のような不良がこんな場所にいるかだと?
それは、目の前で一生懸命ぬいぐるみを選んでいる人に聞いて欲しい。
場違いなのは重々承知だ。

「なぁ、剣城
コレとコレで良いと思う?」

そんな俺の考えを知ってか知らずか
右手に桃色をした兎のぬいぐるみを
左手に黒い狼のぬいぐるいみ抱えてきた
霧野先輩に思わずはぁ・・・とため息をついた。

「どうした?
ため息ついたら幸せが逃げるんだぞ?
それともこっちの茶色の狼が良かったか?」

「違います。
それに両方狼だから変わらないじゃないですか・・
それより霧野先輩、早く決めて下さい。
その・・あんまりこういう場所は得意じゃないので・・・」

語尾を小さくして告げた俺に霧野先輩はアワアワとあわてだした。

「わ、わるい!
すぐに買ってくるからあと少し待ってくれ!」

俺が分かりました、と返事をする前に
霧野先輩はレジへ向かって行った。

その慌て様が何だか可愛らしくて・・え?
ちょっと待て。相手は部活の先輩だぞ!?
それ以前に同じ男に可愛いだなんて・・・
でも、あの愛らしい顔でお願いされたら・・・

「剣城?」

「うぉ!?」

「え?そんなに驚いて大丈夫か・・?」

突然声をかけられ、驚いて飛び上がった俺のすぐ横に心配そうな顔をした霧野先輩が立っていた。

いつのまに・・・

「すみません・・考え事してただけなんで大丈夫です。」

「そうか?ならいいけど無理はするなよ?」

「かっ・・あ、いえ!」

あぶない、あぶない。
もう少しで口に出して可愛いと言うところだった・・・
だけど身長差で見上げてくるのは反則じゃないだろうか。

「そういえば、会計済んだんですか?」

俺が話題を変えるように言うと
霧野先輩は「あぁ!」と思い出したように言いながら
店のロゴが印刷されている袋を持ち上げてにっこりと凄く嬉しそうに笑った。

「もちろん!ありがとな、買い物に付き合ってくれて
どうしても剣城と買いにきたいモノだったから、ついてきてくれて、その、うれしかった」

「っ・・・」

か、かわいすぎる!
もうココまで来れば、俺の中で【先輩】や【男】などと言う言葉はどうでもよくなっていた。

「剣城?」

俺の顔が赤いのを不思議に思ったのだろう
首をコテンッと傾げて俺を見上げてきた。

「あー!!もう!
そんなに可愛い貴方が悪いんですからね!」

言うが早いか俺は霧野先輩をその場で抱きしめた。

「え?ちょっ剣城!?」

俺の腕の中でわたわたと暴れだすが
その姿さえ愛しく感じて抱きしめる腕を強めた。

「・・剣城?」

腕の拘束を強めたところで離さないと分かったのだろう、抵抗することをやめ
霧野先輩は俺に体を預けてきた。

「霧野先輩」

「ん・・・」

耳元で喋ったのがくすぐったかったのか
小さく声をあげる霧野先輩。

「俺、霧野先輩の事好きみたいです」

抱きしめたまま好きだと言うと霧野先輩はくすくすと笑いだした。

「あの・・」

「ふふ、あぁ、ごめんごめん」

「同じ男の俺に言われて気持ち悪くないんですか?」

自分から抱きしめて告白までしといてあれだが思わず聞いてみた。

「はぁー・・剣城って案外鈍感なんだな」

「鈍感・・ですか?」

意味が分からないと首を傾げると
霧野先輩は先ほど買ったショップ袋を持ち上げた。

「問題です。
今日買ったぬいぐるみは二種類です。
さて、買ったのは何と何だったでしょうか」

霧野先輩がレジへ持っていったぬいぐるみ・・たしか

「ピンクの兎と黒い狼・・ですよね?」

「正解!
じゃあ俺と剣城を動物に例えると皆に何と言われてるでしょーか!」

俺と霧野先輩を動物に例えると・・そういえば昨日部活で天馬達が・・

『霧野先輩ってピンク色の兎みたいですよね!
で、剣城は真っ黒な狼!』

って言われてた様な・・あ!

「分かったみたいだな」

「はい」

もしこれが当たっていたら・・・

「俺が今日コレを買ったのは2つをくっつけて部屋に飾りたいから・・あとは言わなくてもわかるよな?」

あぁ、やっぱり

「俺もずっとこのぬいぐるみのように・・剣城となりたいと思ってた」

俺は・・・

「俺は・・・幸せ者ですね」

愛しい人が買った2つのぬいぐるみ

それは、俺たちの未来の形を表していたのだった

「先輩・・・愛してます」

「俺も、剣城が大好きだ」

デパートの中で重なる二つの影・・

それは狼と兎の幸せのしるし
















END

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