商品2

□11月11日
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「霧野君」


ある昼下がり
部室で他のメンバーが来るのを待っていた俺は不思議な人物に遭遇した。

「しゅ、しゅう!?」

「うん、君の大好きなシュウ君だよ」

にっこりと効果音をつけて不思議な人物もといシュウは笑う。

「な、なんでお前がココに!?」

俺が取り乱すのも分かって欲しい、
だって精霊のはずのシュウが何故か俺の目の前に居るのだから。

「何でって、君に用があってココに来た。
これじゃ理由にならないかな?それとも僕は来ちゃ駄目だったかな・・・」

少し、しょんぼりとして言うシュウに思わず霧野は慌てだす。

「いや、そんな事ない!ただいきなりだからビックリしただけだ!」

「ふふ、やっぱり霧野君は優しいね。ところで僕が来たのはね・・・」

ゴソゴソと持参したリュックを漁るシュウに霧野は「ん?」と」首を掲げて待つ。

「あった、これこれ」

ジャーンっと効果音を付けてシュウが取り出した物、それは・・・

「ポッキー・・?」

「うん、ポッキーだよ。」

「何でポッキーなんだ?」

意味がまったく分からないと首をかかげて言う霧野にシュウはおなじみの笑顔をたたえて言う。

「今日は何日か知ってる?」

「11月11日だろ?」

「じゃあ、11月11日は何の日でしょう」

「11月11日・・・」

う〜んと手で口元を抑えて、霧野は考えるが答えが出てこない。

「わからないかな?」

シュウが声をかけるが、考える事に夢中になっている霧野は気付かない。

「11月11日・・・」

「霧野君!」

少し大きな声でシュウが名前を呼ぶと霧野は「はっ」として謝る。

「え・・あっ・・ご、ごめん!考えるのに夢中になってた!」

「ふふ、答えが出ないようだから正解を教えてあげるよ」

言いながらシュウはポッキーを1本袋から出すとポキンッと小さくおり、霧野の口に入れる。

「あむっ」

グイッと近づいたシュウは、霧野の口にむしゃぶりついた。

「んっ・・・んむぅ」

「きりの、くん」

「あっ・・んっ・・んふぅ・・」

数十秒たっただろうか、体に力が入らなくなった霧野を支えながらシュウは口を離した。

「はぁ、はぁ」

顔を真っ赤にしながら呼吸を整えようとする霧野の姿を愛しそうに見ながらシュウは言った。

「正解はね、ポッキーゲームの日だよ」

「ぽ、ぽっきーげーむ?」

やっと息の整った霧野がシュウに聞き返す。

「そう。好きな相手とポッキーを一緒に食べる日だよ」

「なっ、ポッキーを食べるって、お前今ポッキーじゃなくて俺にちゅ、ちゅうしたっ・・」

先程の事を思い出したのか、霧野は顔を赤くして口ごもる。

「ふふ、可愛いね。霧野君は僕とキスするの嫌だった?」

「っ・・・」

少し意地悪に言うシュウに霧野の顔は更に赤くなる。

「そう、嫌だったんだね。・・・じゃあ僕はもう帰るね」

クルッと体を反転させ、霧野から離れて扉に向かって歩き出す。

「ごめんね」

そう言って扉から出ようとしたシュウの背中にギュッと霧野が抱きついた。

「霧野君・・・」

「い・・・」

抱きついたまま霧野が何か呟いた。

「え?」

「だからっ、嫌じゃなかった!好きな人にされたら嬉しいに決まってるだろ!」

聞き返された霧野は抱きつく腕をさらに強くして恥ずかしさからか大きな声で答えた。

「そっか・・ふふ、霧野君ならそう言ってくれると思ってたよ」

霧野の腕をそっと離すとシュウは霧野の方へと体を向けて耳元に口を寄せて言った。

「僕も大好きだよ」

「俺もっ、シュウが好きだっ」

そして、そのまま二人の唇が自然と重なり合った。


















数分後、
疲れて眠った霧野を膝に寝かしながら一人の少年が持っている本を読み上げる。

「ポッキーゲーム、それは恋人達が愛を深める日である・・か。
ふふ、霊力を使ってまで君に会いに来て良かったよ。
また会いにくるから待っててね、愛しい愛しい僕のお姫様」


















END

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