≪紅花≫
□1話
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翌朝。
ぱちり、と目が覚めた。目の前には見慣れない部屋。
……少しだけ、目が覚めたら現代に戻れるんじゃないかって期待していたんだけれど。
そこには昨日案内された置屋があるだけだ
『はぁ…』と人知れず溜め息が出る。
そこへ…
『咲はん、起きてはりますやろか』
此処の主である藍屋さんの声がした。
『あ…はい。起きてます』
そう言うと、静かに襖が開いて藍屋さんが顔を出す。
『夕べはよく寝られはりましたか?』
『はい。寝れました』
『良かった。下に朝餬を用意したさかい、支度したら降りてきなはれ』
微笑みながらそう言って、彼は再び部屋を離れる。
静かに足音が遠ざかっていった。
私は…改めて思わざるを得なかった
今日から此処での、幕末での生活が始まる。
『よし…くよくよしたって始まらないよね。頑張らなきゃ!!』
自分で自分に喝を入れて私は部屋を出た。