≪紅花≫

□2話
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『藤堂さん……』

思わず声をあげる。

すると彼は少し目を見開き私をまじまじと見た後『あぁ』と言って納得したように手を打った。

『藍屋さんの所の新造だっけ?』

『はい……』

『この前はごめんなー。怖かったでしょ?』

申し訳なさそうにふっと微笑まれる。

『怪我とか無かった?もう一人の新造の娘も』

『はい…』

『そ、なら良かった良かった』

目の前であどけなさの残る明るい笑顔が弾ける。思わず私もつられるように笑顔になった。その時…  

『藤堂!油を売るなら他所でやれ』

鋭い声が藤堂さんの隣から聞こえた。

『新見さん…別に油は売っちゃいないって…』

『煩い。兎に角今は屯所に帰るのが先だ。俺は先に戻るからな』

そう言うと、男の人は早足で行ってしまった……
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