小説
□frustration
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『Prologue』
小学校の卒業半年前くらいにキルアに好きだって言われた。幼稚園の頃から俺とキルアはよく遊んでて、よく周りから、からかわれたりもしたけど正直そんな風に意識したことはなかった。
だから返事はイエスでもノーでもなく「考えさせて」と言ってしまった。
好きがよくわからなかった。
もちろんキルアのことは好きだったけど、付き合うとかの好きはよくわからない。
悩んで悩んで、しばらく俺たちの間には距離が出来た。
ある日、休み時間にクラスの女子がキルアの話をしていた。俺はつい聞き耳たててしまった。
「キルア君、私立中学受験するんだって!」と話していた。
(私立受験…?)
確かにキルアは頭がいいし家はお金持ちだけどそんな話聞いてなかった。
なんで俺に話してくれなかったんだろう。でもそういえば、最近ずっと話出来てなかった。
返事…しなきゃいけないのに、なんて言えばいいのかわからなくて…俺が逃げてたんだ。
(中学…一緒に行けないんだ…)
キルアと離れるかもしれないと知ると、胸が痛かった。
いつも一緒にいたキルア。
4年生の時にクラスの子が遠くに転校した時はこんな気持ちにならなかったのに…
離れたくないと思った。
ずっと一緒にいたい。
「私キルア君に告白しちゃおうかな…」
話してた女子が他の子に相談してる。
告白?キルアに?
キルアが…他の子と付き合うの?
キルアの隣には俺以外の女の子…
(いやだ。)
そう思ったら胸がドキドキしてきて、初めてキルアが好きって気づいた。
想い始めたらもう止まらない。
俺は教室を飛び出し、急いでキルアのところへ向かった。
休み時間にキルアはよく屋上へ続く階段の1番上にいる。屋上へはカギがかかっていけないけど、滅多に人が来ないから、よく俺たちはそこで作戦会議とかする。
勘だけど、きっとそこにいる。
「フリークス!廊下は走るな!」
「ごめんなさい!」
先生に注意されたけど、それよりもキルアに伝えたい。
階段を2段飛ばしで駆け上がって…キルアを見つけた。
「キルアっ!」
「ゴン!?」
勢いに任せてキルアに飛びついた。
突然の出来事にキルアは目を丸くしている。
廊下を走って階段を駆け上がって息が上手く出来ない。
でも、伝えたい。
「はっ…ぁ、ん。好、き…だよ。」
「え。」
「キル、おれ、も。はぁ…好きだよ。」
ちょっと息を整えて、
「キルアが好きだ!」
「ーっ//////」
中学違ってても一緒にいたい。
今までみたいに会えなくなるけど、繋がりがほしい。
他の子がキルアの隣にいるなんていやだ。
キルアの隣は俺だけなんだ。
返事、遅くなってごめん。
キルア…
「ゴン、お前…走ってきたのか?」
「…キルアに早く伝えたくて…」
「顔、真っ赤。」
「〜っ///キルアだって真っ赤だ!」
キルアは俺の身体を一旦離し、両腕をちゃんと背中に回し抱きしめ直してきた。
「嬉しいからだよ。」
そんなことを言われると、恥ずかしくてまた顔が熱くなる。きっと俺の顔は真っ赤だ。
恥ずかしくて下を向いてるとキルアの腕の力が強くなってそのままギュッと抱きしめられる。
キルアが俺の耳元で話してきた。
「今日から俺ってゴンの恋人でいいんだよな?」
「…うん///」
キルアの服をギュッと掴んで言った。
キルアを好きだと自覚して、
キルアにそのまま告白して、
強く抱きしめられてる。
でも、全部いやじゃない。なんでもっと早くに気づかなかったんだろう。
キルアが好きだったんだ。
(今日から俺、キルアの恋人…)
「ゴン。」
俺を呼ぶ声に顔を上げると唇に柔らかい感触がした。
なにが唇に当たってるのか認識する前にそれは離れていった。
目の前には先程と変わらず真っ赤な顔のキルア。でも口の端は上がってて嬉しそうに笑ってる。
「奪っちゃった。」
「―――っ////」
(もしかして…今のって///)
「あ、///あ…キルアのバカァァァァ!!」
バチ――――ンッ
突然キスをされて、無意識に俺はキルアの頬を思い切り叩いてしまった。暴言付きで。
叩いたことを認識しキルアを見ると、尻餅ついて片手で頬を押さえて茫然としている。
俺自身もある意味叩いてしまったことに驚いてる。
でも…だって恥ずかしかったんだっ。
いきなりされると思わなかったし、恋人になったばかりなのに…
「キ、キルアごめん。ちょっとビックリしちゃって…痛かったよね?」
「あ、あぁ…俺もごめん。いきなり。」
今日はなんて忙しい日だろう。
頭の片隅で休み時間を終えるチャイムが鳴ってる。
先生ごめんなさい。
ちゃんと廊下で立つから
今はもう少しキルアと一緒にいさせてください。
俺はキルアの頬を撫でた。
少しでも痛みが無くなるようにと。
fin