土方祭2014
□恋のお題−5
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テレビが、伝える。
あのひとたちの足跡。
ああ、あれは本当にあった出来事。
歴史の中の一ページなのだ。
ときめきはほんの一瞬のことのようだった。
あたしは夕方の神社でひとり放心していた。
制服に裸足で。
身なりはヨレヨレだったって。
みんなが安堵で大泣きしていたけど。
あたしの意識はそこにはなかった。
眠れない夜が幾日も続いて。
真っ暗な闇はもうこの世界にはないけれど、真っ暗な闇の中の方がここよりはずっと心地好いと思えるくらいには、恋しくて切なくて。
もう、二度と。
貴方には会えないのだと。
現実を噛みしめるほど、目は冴えて。
しらじらと明けていく夜。
朝になった。
…夢じゃなかった。
その繰り返し。
その背中にしがみつけばよかった。
変な処で物分かりの好いふりをしてしまう。きっとそれは見透かされていて。
でもね、甘えるってどうすればいい?
時代を切り拓いて行くひとたちの、強い意志と、他を寄せ付けないそのオーラに、あたしは自分の想いをぶつけるなんて出来なかった。
あたしの気持ちは、大人の貴方には全部お見通しで。
だからこそ、あんな最後をあたしに投げつけたんだって。
君とは幸せになれないから。
というニュアンスの言動は、
お前は幸せに暮らせ。という言葉の裏返しだったんだって。
貴方の歴史を知りたくて見聞きしているうちに、あたしの中にじわじわと広がる痛み。
酷いよ。
あたしの幸せは、貴方が欠けてちゃ、成り立たないのに。
それでも現在を生きろって、言うんだもんね。
空虚な心は、浅葱の空を漂う。
掴みたくても手には届かない、雲のような貴方を永遠に求め続けて。