おいでよ天才達の森
□第一話
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「しかし…こんな雨の中引っ越しとはお嬢ちゃんも大変だねぇ」
『ふふっ、でも楽しみです』
そう、今日は待ちに待った私の独り暮らしの日。
それなのに天気はあいにくの雨…。
でも念願の独り暮らしが出来るから天気なんて何も気にならない。
むしろ興奮しすぎて暑くなっている私には調度良い。
「それはそれは。そう言えば村の名前は分かってるのかい?」
『それが…村の名前は決まっていないそうなんです』
「決まっていない?そんな村があったのか。知らなかったなぁ」
『確かに…聞いたことないです。新しくできたところみたいで…』
「でも、良いところだと良いね。あっ、見えてきたよ」
────……・・・
『ありがとうございました!』
「いいえ、それじゃあ体に気を付けてね」
タクシーを見送りバッグの中から地図を探していると──…
「新入りさんかな?」
『へっ?』
後ろを振り返るとそこにはそよ風に綺麗な赤色の毛をなびかせている背の高いゴーグルをした──…男性?男の子?(若そうだけど…)が立っていた。
『はっ、はい!新入りです!怪しい者ではありませんです!』
「うそっ!?ホントに?!ロジャーは新入りは男だって言って──…」
『えっ…おと、こ……?』
もしかして手違いってヤツ…かな?
「あ…んーん、気にしないで!っと…そんなことより、村長さんのところに挨拶行ってきな?結構優しい人だよ。どちらかと言えばツッコミ担当かな?」
『あっ、挨拶!ありがとうございます!行ってきます!』
「うん、気を付けてね♪それと、お名前教えてもらっても良い?」
男の人はゴーグルをグイッと上へずらして言った。
レッドブラウンの綺麗な優しい色の瞳が、先程の雨からは想像できないほど晴れ渡った空の色を写していた。
それがあまりにも綺麗で見とれてしまっていた私を不思議に思ったのか、少し顔を近付けて「どうしたの?」と訊いてきた。
『ふぇっ!?あっ!私ヒヨと申します!よろしくお願い致します!』
「アハハッ!ヒヨちゃん面白いね。俺はマット、よろしくね♪」
そう言うと手を差し出してきた。
初対面の相手にこんなに優しくしてくれるなんて…と感動しつつ手を伸ばそうとした瞬間──…
「ソイツに触るなっ!!」
『えっ…?』
声のする方を見るとそこには…綺麗なブロンドヘアーのこれまた、男性とも男の子とも言えそうな男の人がこちらを(睨んで?)見て立っていた。