おいでよ天才達の森

□第二話
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「お前まだコイツに触ってないな?」


「あっ、メロ!ここにいたのバレてたんだ…うん、触ってないよ♪と言うか手が折れそうだな〜」


‘メロ’と呼ばれた少年はマットさんの手を捻り上げていた。

彼はポカンとした顔で固まっている私の方を向いた。


「アンタ、マットに絶対に触るなよ。面倒くさいからな」


『なっ、何でですか?』


「…ここにいるヤツは皆、変な能力を持っている。コイツは厄介なもので女が触り過ぎるとその女が二日間はコイツの虜になる。簡単に言うと‘生きる惚れ薬’だ」


『………』


あまりにも衝撃的すぎて言葉が何も出てこない。

それが本当なら凄いと思う。

心底思う。


「ごめんね、言うの忘れてた」


『い、いえ…ちなみにメロさんはどんな能力を…?』


「待て、自己紹介が先だ。もう知ってるようだが俺はメロだ」


『あっ、ごめんなさい!私はヒヨです』


「そうか。俺の能力は──…」


「ツンデレ!」


「……能力は──…」


「ツンデレ!」


「………」


「ツンデ──…」


「……撃たれたいのか?」


メロさんに釘をさされ、マットさんは小さくなっていじけだしてしまった。

下手なお笑い芸人よりもよっぽど面白いと思った。

でも‘撃たれたいのか’って…まさか銃とか持ってる訳じゃないよね……?


「悪い、また今度教えてやるよ。じゃあ俺は用があるから先に行く。マット、絶対に触るなよ」


「オーケー、良い子にしてるよ」


そう言葉を交わすとメロさんはどこかへと去っていってしまった。


「っと…それはそうと…道、分かる?俺が役所まで連れてくよ」


『えっ……そ、そんな悪いですし……』


「…メロの言葉が不安?大丈夫だよ、一時間は触れてないと効果はないから」


『あっ、そうだったんだ!良かった…』


「プッ、ヒヨちゃんって分かりやすいね。さ、行こ?」


『はい、行きましょう!』


うん、何だか優しい人たちがいっぱいで良い村だな♪


そんなルンルン気分で歩いていた。


後ろの視線にも気付かないで……。
 

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