ちょっと長めのお話
□竜崎の暇潰し 2
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全く付き合ってられない…。
そう思った私はお手洗いに行くと言って席を立った。
『はぁ……』
この疲労感何なんだ…。
普段の仕事よりもよっぽど疲れている。
ライト君のあの反応は…演技か?
彼は相当演技が上手い…それは身近にいればすぐに分かることだ。
結局ライト君は謎多き人間なのよね……。
少し落ち着いたので、また捜査室へと向かう。
「ねぇ……本当に僕はダメ…?」
ちょおぉっ!
な、何がどうしてあんなことになってしまったの?!
竜崎はライト君にソファの上に押し倒されていた。
フと竜崎が一瞬私に視線を合わせてからニヤリと笑ってすぐにそらし、ライト君の首に腕を回した。
するとライト君は右手を竜崎の背中に回し、左手を胸の上に置いた。
ちょっ、それボール!ボールだよ!
「すごい弾力だね…」
空気満タンだ!
って今はそれどころじゃない!
いてもたってもいられず、ドアからだいぶ離れたところから鼻唄を歌いながら部屋に入る。
私が戻ってきたことに気が付いたのだろう、部屋に入るとライト君は元いたところに座っていた。
が
竜崎!
アンタ空気読みなさいよ!
何で倒されたままのかっこでいるのさ?!
『り、竜子さんどうしたの?』
訊かないのも不自然だからライト君に訊く。
「そ、それが…バランス崩しちゃったようで──…」
「襲われました」
『?!』
「えっ…?」
明らかに素の声を発した竜崎にライト君が呆然としている。
「こ、声低いんだね…」
いやいや、気付こうよ、竜崎だよ。
ライト君はカップを手に取ると、冷静を取り戻そうと必死なのか、目をつむり口を付けた。
バコッ
『?!』
「…1回は1回です」
目の前を何かが飛んでいったと思いよく見るとボールで、ライト君の頬に直撃した。
ライト君は何がなんだか分からないというように固まっている隙に、竜崎は私の手を引っ張って捜査室を出た。
廊下を引っ張られながら歩いていると、途中で鼻栓した松田さんと出会った。
「あっ、竜子さんどこに行──…」
バコッ
「グヘァッ!?」
竜崎はボールを投げ付けるとまた歩きだした。
『ど、どこ行くの?!』
「自室です」
『な……どうして私も行く必要が──…』
「好きです」
…………はい?
全く関係無い言葉が出てきて、意味が掴めなかった。
スキデス?
スキ?
何それ?
誰が誰を?
何も言えないでいるとまた竜崎が繰り返した。
「好きです。ヒヨさんのことがとても好きです」
『え…えぇっ?!』
「貴女を可愛いと言えるのも…綺麗と言えるのも…触れるのも…触れられるのも……全て私だけです」
『……っ!』
いきなり歩みを止め、私の前に立ったから止まれなかった私は竜崎に正面衝突する。
『わわっ…!』
「…捕まえました。もう逃がしません」
いつの間にか私の背中には腕が回されていた。
ゆっくり見上げると優しい顔で見下ろす竜崎と目が合う。
そして下りてくる唇は触れる寸前に音を出す。
「……貴女を…拘束します」