少しでも、あなたを記憶の片隅に。
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歩みだした一歩は彼と同じ
神奈川に無事戻ることになった私は高校をどこにしようか迷った。
『ひーちゃんがどこに行くかも知らないし…。』
ただバスケは続けているだろうと思った私は、海南大付属か陵南高校かなと思い、この2校にしぼった。案の定バスケ強豪校の海南大付属は文武両道で進学も安定しているからと父に進められ、そこを受験することにした。
しかしそれは入学をしてから気づく。
『…あれ、ひーちゃんが見当たらない。』
海南は私立で有名なところでもあり、入学者の人数は多い。そこで探すのはまず無謀なことだが、私は今バスケの体験入部を見に来ているのだ。
いないはずはない。
「…バスケに飽きたとか。…流石にそれはないよね。」
「ななしのはマネ希望か?」
「あ、牧君…。」
彼の名前は牧紳一。バスケがとても上手で、スポーツ推薦だったらしい。…うーん、高1には見えない体格とオーラだ。
「マネか〜…。でも今はちょっと人を探してて…。」
「誰だ?」
「三井寿っていうんだけど…。」
「三井寿…といえば中学の時にMVPとったやつじゃないか。確か彼は湘北に行ったよ。」
「しょ、湘北?!」
私は口を閉じることが出来ず、牧君に指摘されるまで放心状態だった。
「だって、湘北ってバスケで有名なところじゃないよね?」
「まぁ、そうだな…。だが監督がいい人らしいから今年はどうなるかはわからない。」
「そっか…。」
私はもう少し詳しくバスケのことを調べておけば良かったと、後悔した。
『…でも勝ち負けだけでなくて、この人の元で頑張りたいと思うひーちゃんの気持ちは立派だな…。』
私は長い間会ってなくても根本は変わっていない彼の様子を聞けて、少し安心した。
「…じゃあ、牧君バスケ頑張ってね。」
「マネいいのか?」
「だって私ルールとかわからないし、経験者じゃないよ?」
「だがバスケを見るのは嫌いじゃないだろう?」
「…うん。大好き。」
「じゃあ問題ないんじゃないか?一緒に入部届け出そうぜ。」
私はマネージャーになることを決めた。