少しでも、あなたを記憶の片隅に。
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戻れない過去
なっちゃんだった。
忘れもしないあいつのこと。ただ昔に比べてずいぶん大人っぽくなった。いや、もう何年も会ってないんだ、当たり前か…。
しかし急すぎた。心の準備もないまま突然俺の前に現れて――。そもそもいつこっちに帰ってきたんだ?俺に何も連絡なしに。あ、それは俺が返事返さなかったからか?湘北って一言書けば良かったのか?
あんなこと言うつもりはなかった。あいつを悲しませることなんて、俺が最もタブーとしていたことだ。
それを――…俺は簡単に破った。
学校、同じじゃなくて良かったのかもしれない。少し見ただけでショックが大きいのに、そんなやつが毎日近くにいたらあいつは昔みたいに毎日泣くだろう。海南と湘北は少し離れているから、もう会うことはない。
俺も今のままでいられるし、あいつもこんな俺に会って幻滅したはずだ。
ごめんな。
本当はお前にこんな気持ちさせたかったわけじゃねーんだ。
『ひーちゃん…』
なっちゃん…今お前の背中さすってるのは別の男だろ…?