少しでも、あなたを記憶の片隅に。

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戸惑い、不安、驚き

春になった。

私は2年生になり、クラスは高砂君と武藤君同じに。1年生の頃同じクラスだった牧君とは少し離れちゃったけど、よく物を忘れる私はそのたびに牧君に借りていた。

『…だって牧君のノートみたら完璧だからさ、宿題とか。』

バスケ部は相変わらず沢山部員が入り、なかでも印象深かったのは神宗一郎君という子だった。色白で細すぎてみんなから「ちゃんと食べてる?」とか「バスケ部ハードだよ」とか言われていた。監督も心配していたが、私はなんだか頑張れ!っていう気持ちの方が勝った。
そんな神君とも仲良くなり、今年の部活もまた楽しくなりそうだった。

「ななしの、監督が呼んでいるぞ。多分次の練習相手のことじゃないか?」

「ありがとう。行ってくる。」

失礼します、と言って職員室に入る。奥の方で監督が手招きしているのが見えた。

「練習相手のことですか?」

「そうだ。話は聞いているかね?」

「いえ、まだ…。」

「相手なんだが、湘北高校というところだ。」

「湘…北…。」

「あまり有名でないからマネでも知らないだろう。がっはっは!」

「は、ははは…。」

失礼しました、と職員室を出た私は真っ先にため息をつく。
湘北の三井寿について調べてきてほしいと言われたのだ。

「そんなこと言われてもね…。」

『てめぇ誰だよ!』

あの日から何ヵ月も経った今だが、なっちゃんは忘れられなかった。彼の一言は私の心に大きな溝を作ったのだ。

「調べろって、どう調べればいいのよ〜!」

ぷんすか怒りながら廊下を歩いていた私の後ろから、急に声がした。

「先輩。」

「あ、神君。」

「そんなにせかせか歩いて、何か困り事でもあるんですか?」

「うーん、あるかな。」

「俺で良かったら相談のりますよ。」

「…じゃあ、聞いてもらおうかなっ。」

私は監督に言われた、三井を調べてほしいという依頼の話をし、どう調べたらいいかを聞いた。
すると彼から思ってもいない答えが帰ってきた。

「本人と話すのが一番ですよね。」

「えっ?」

「最近三井さんの記事も読まないですし、何か調子が悪いのかもしれないですから。ここは本人に聞くのが一番ですよ。」

「で、でも、私ひーちゃ…じゃなくて、三井さんが何処にいるか知らないし…。」

「俺、三井さんの自宅知ってますよ。以前お世話になりましたから。」


「え、えぇー!」

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