少しでも、あなたを記憶の片隅に。
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頑張る君
『もし何か他にも悩み事がありましたら、いつでも相談にのりますよ』
結局彼の清んだ瞳に負け、今日の放課後神君に連れていってもらうことになった。最近神君は夜遅くまで残って練習をしていると聞き、じゃあ待ってるねと言うと「すみません…」と彼は申し訳なさそうに言った。
ピーッ
「練習始めるぞ!」
部長さんの一言で、牧君や神君たちが真ん中に集合する。まだ3年生よりでかいって…。
私と友達のおてもやんは新しく入ったマネージャーの子に色々と説明をしていた。まだ中学4年生みたいな可愛い1年生は必死に覚えようとする。去年は私もこんな感じだったのかなとおてもやんに聞くと、「あんたからは必死さが伝わってこなかった」と言われた。私だって頑張ってたんだからねー!
そんな会話をしていると自然とその場の雰囲気もなごみ、先輩から「楽しそうね」と言われた。
外も暗くなってきて体育館の電気がより明るく感じられてきた時、部長が今度の試合についての話をした。その話には三井が危険人物だとかマークしろとか、私は改めて彼の偉大さに気づいた。
『ひーちゃん…。』
練習が終わりみんながぼちぼち帰り始めた時、牧君が話かけてきた。
「まだ帰らないのか?」
「牧君こそ。」
「俺はお前待ちだ。」
「えっ」
牧君からの意外なお言葉をいただいた私はびっくりした。牧君いわく、この間の事もあるから一人で帰らせるわけにはいかないとのこと。しかし今日は神君との予定があると話すと、「神と付き合っているのか?」とこれまたびっくりなことを言われたので、首をぶんぶん振っておいた。
『…先輩あんなに否定しなくても。』
神はなんだかその光景が可笑しくなって笑った。
私は体育館の掃除をしながら神君を待つことにした。毎日終わってから500本だっけ?1000本?…とりあえずこんなに練習したら上手になるよな〜と、今から彼の成長が楽しみだ。
「…はぁ。先輩、お待たせしました。」
「え、全然待ってないから大丈夫だよ?」
「ありがとうございます。じゃあ行きましょうか、三井さんの家に。」