少しでも、あなたを記憶の片隅に。

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月の光は人の心だって照らし出す


「さ、乗ってください。俺がこぎますんで。」

日頃の行いのせいか腕に筋肉がつき、身長も伸びてきた神君はなんだかたくましく見えた。…色白は相変わらずだけど。

「…じゃあ、乗せてもらうね。」

私を乗せた自転車はゆっくりと動き始めた。




夜の風が私の髪の毛を通りぬけ、月が私たちを照らす。なんかロマンチックだ。こうやってよくひーちゃんとも夜散歩したっけ…。私はまたぼーっとそんなことを考えながら神君に捕まっていた。

「先輩。」

「…。」

「なっちゃん先輩。」

「あ、神君ごめん!呼んだよね?」

「これで5回目ですよ。」

「ほんとごめん!…で何?」

「先輩、さっき三井さんの話をしたらばつが悪そうな顔しましたよね。何かあるんですか?」

「え、そんな顔したかなぁ。」

「はい。」

「そうかな…。あ、そうだ!神君はなんで三井さんと知り合いなの?家も知ってるし…。」

私は話を神君にふった。あのままの雰囲気だったら色々と話しちゃいそうで…。でも彼には近いうちにばれそうだ。

そんな彼が口を開いた。

「俺、海南の三井寿になりたいんです。三井さんの3ポイントに憧れてて…。以前試合会場でお会いした時に仲良くなったんです。」

「…そうだったんだ。」

「多分俺以外にも三井さんに憧れてバスケ頑張っている人も多いと思いますよ。」

「うん…。」

神は冗談で「先輩もそのうちの一人だったりして。」と言ってみた。その時彼女がいつもになく切ない声色で「うん…。」と答えたのを神は聞き逃さなかった。

『…へぇ。気になるなぁ。』

神は少しこぐペースを上げ、三井の家まで急いだ。

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