少しでも、あなたを記憶の片隅に。

□10
1ページ/1ページ

越えなければいけない壁


「先輩着きましたよ。」

「…あれ、一軒家じゃない…。」

「まるで三井さんの家を知ってるかのような言い方ですね。」

「…。」

神君って侮れないと思う。なんかこう――読めないというか、なんというか…。
…私が単純なだけ?

「じゃあ、俺はここで失礼します。駅はすぐ近くにありますから。」

「ありがとう、神君。」

「いえ。ではまた明日。」


神が行ってしまった後、なっちゃんはというと、三井宅の前でいまだにチャイムを鳴らせないでいた。

『これでいなかったらいいんだけどな…。』

でも折角神君が送ってくれたんだしと思うと、押さざるを得なかった。

ピンポーン

…。

ピンポーン

……。

ピンポンピンポンピ「だぁ!うるせぇなぁ!」

「うわっ!」

「…。」

「…。」

お互いに沈黙がはしる。

「…おい、お前ちょっとこ「…ごめん。」――はあ?」

「だからごめんね、って…。」

「…一旦入れよ。」


なっちゃんは言われるままに三井の家に入る。


部屋は煙草の匂いなんかしなかった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ