少しでも、あなたを記憶の片隅に。

□14
1ページ/1ページ

お父さーん


「明日は湘北との練習試合だ。いくら無名だとはいえ、あそこには中学時代にMVPをとった三井寿がいる。気を引き締めていけ。」
「はいっ!」


夏がもう終わる。

地区大会を順調に勝ち進み、県代表になった海南は来週末に関西の学校との試合を控えていた。明日は親善試合なようなもので、湘北に行くことになっている。
正直足が重かった。

「なっちゃん、もう体調は大丈夫?全く…神から聞いたときはびっくりしたんだからね!」

「ごめんごめんっ」

そう話ながら私たちは明日の準備をする。おてもやんは「ちょっと先輩のところに行ってくる」と行って、パタパタかけていってしまった。

『おてもやんは私のことより自分の心配しなよね…。病気完治してないんだから。』

「なっちゃん。」

午後の練習が終わり皆が帰り始めた頃、牧伸一が近づいてきた。

「あっ、牧君。どうかした?」

「目、だいぶ腫れたな。」

「あー…うん。でも泣いて腫れたわけじゃないから安心して!モノモライよ、モノモライ。」

「…そうか。まぁ、安静にしろよ。」

「はーい。お父さんありがとう。」

自分のことより皆のことを気にかけ、心配してくれる彼を2年生は「お父さん」と呼んでいる。まぁ、極一部だけど。


『わーっ。初めて呼んじゃった、お父さんって。なんか新鮮…』

『…やはり神に任せたのが失敗だったな。』

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ