少しでも、あなたを記憶の片隅に。
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お父さーん
「明日は湘北との練習試合だ。いくら無名だとはいえ、あそこには中学時代にMVPをとった三井寿がいる。気を引き締めていけ。」
「はいっ!」
夏がもう終わる。
地区大会を順調に勝ち進み、県代表になった海南は来週末に関西の学校との試合を控えていた。明日は親善試合なようなもので、湘北に行くことになっている。
正直足が重かった。
「なっちゃん、もう体調は大丈夫?全く…神から聞いたときはびっくりしたんだからね!」
「ごめんごめんっ」
そう話ながら私たちは明日の準備をする。おてもやんは「ちょっと先輩のところに行ってくる」と行って、パタパタかけていってしまった。
『おてもやんは私のことより自分の心配しなよね…。病気完治してないんだから。』
「なっちゃん。」
午後の練習が終わり皆が帰り始めた頃、牧伸一が近づいてきた。
「あっ、牧君。どうかした?」
「目、だいぶ腫れたな。」
「あー…うん。でも泣いて腫れたわけじゃないから安心して!モノモライよ、モノモライ。」
「…そうか。まぁ、安静にしろよ。」
「はーい。お父さんありがとう。」
自分のことより皆のことを気にかけ、心配してくれる彼を2年生は「お父さん」と呼んでいる。まぁ、極一部だけど。
『わーっ。初めて呼んじゃった、お父さんって。なんか新鮮…』
『…やはり神に任せたのが失敗だったな。』