夢物語

□温もり【火神大我/甘】
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「あーつーいぃぃいいいっ」

あたしの叫びがストリートに広がった。
練習をしていた彼は動きをやめて、あたしに近づいた。
汗がいいぐあいに色気を出していて、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

「そんなに暑いか?」
「てゆーか、暇です」

"ったく……"と言いながら彼はあたしと自分の荷物と、あたしの手首をとり歩きだした。
行く先も言われずあたしは少し強引に引っ張られるままついていった。
手汗をかいていた彼の大きな手は暑く、すこし生ぬるい温もりを感じた。

「ホラ、ここならどうだ?」

そう言って彼はあたしの背中をトンッと押し、前に押し出した。
目の前に広がる光景は幼いころよく見慣れたものだった。

「…………ただの公園じゃない!」
「だって暇なんだろ?遊ぼうぜ!俺日本の公園で遊んだことねぇんだよ?」
「……子どもかってのー」
「おらっ」
「ひゃっっ」

パシャという水音と共に一部の肌が冷たくなる。
彼の方を勢いよく見てみると、蛇口から水を出し、手にすくってあたしにかけるよう構えていた。
あまりの彼の子どもっぽい行動に呆気をとられていたら、また水をかけられた。
ここからあたしにもスイッチが入った。

「やったなー!!」
「やったぜー!!」
「仕返しっ!」

そう言って近くにあったペットボトルに水を勢いよく入れて彼にぶっかけてやった。

「うわっせこっ!」
「不意打ちのがせこいしーっ」
「だったら……」
「……え、ちょまっそれダメでしょ!!」
「ペットボトルがありならこれもありだ、ろっ!」

一気にコックをひねったせいか勢いよく水が吹き出てきた。
彼はホースを片手に、あたしに向けて水をかけてくる。
突然のことで避けることが出来なかったあたしは、見事に全身に水をかぶった。

「もぉー、大我のばかーっ!!」

笑いながら彼の名前を呼び、下を向いて前髪をかきわけて彼の顔をみた。
彼はホースを持ったまま固まってしまって、あたしはその彼に驚いてしまった。
みるみるうちに彼の顔は真っ赤になって……

「これ着ろっ!!!」

そういってあたしに向かって自分の上着を投げてきた。
"わあっ"とあたしは変な声をあげて、バサ、と彼の上着はあたしの頭上に見事に着地。

「えー……あt」
「俺がもたねぇ!!」

言葉の意味が理解できず、頭にはたくさんの??が浮かぶ。
とりあえず渋々彼の上着を着てみたものの、
……でかい。
それと、優しい彼の匂い。
優しく包まれるような、そんな気分になった。

「ふふっ大我の匂いがするー」
「そりゃ俺の服だからな」
「あたし大我の匂い好きだよ」
「……」

あ、また真っ赤になった。
そんな彼の表情が大好きで、つい……いじめたくなる。

「へへっ」

そういってふにゃんとやわらかい笑みをこぼして見せると、彼の顔も満面の笑みに変わる。
にっときれいな白い歯を見せ、あたしの肩を抱き寄せ、あたしの頭を撫でながら話す彼。

「風邪ひかれちゃあ困るから、俺ん家行くか。服かしてやるよ」

彼の横顔はきれいに整っていて、頬を赤らめさせていた。
そんな彼が大好きで、"うんっ"と言いながら抱きついてやった。

バスケしてるときの大我もかっこいいけど、
こんな風に人の事を気遣ってくれて、
あたしの事を大切に思ってくれて、
そんな彼が、彼の温もりがあたしは大好き。

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