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□戦パラ 小説
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風邪A
超長文につき閲覧注意。
途中にちょっとドキッとするシーンがありますが、そういうものを意図したわけではありません。
不快に感じられる方は早めにお戻りください。
注意書きは「風邪@」を参照です。
☆東軍:小早川秀秋様ver.
「〇〇〜!今日は何してあそ…あれ?」
秀秋はいつものように〇〇の屋敷にやってきた。だがいつも開いているはずの〇〇の部屋の障子はぴっちりと閉まっていた。
「〇〇…どうしたんだろう。僕が来るときはいつも障子開けて待っててくれるのに…。」
本来なら家臣である〇〇が秀秋の屋敷に行くべきなのだが、秀秋は〇〇の屋敷が気に入ったらしく、連絡なしで屋敷に遊びに来るので、庭に面した〇〇の部屋の障子はいつも開いている。
「ちょっと部屋を覗いてみようかな…。でもお取り込み中だったら悪いし…。どうしよう。誰か近くにいないかな?」
秀秋は辺りを見回すが誰もいない。
「会わずに帰るしかないのかな?けどそれも寂しいし…。」
秀秋が途方に暮れていると、〇〇の伝令が秀秋を見つけ駆け寄ってきた。
「あ、秀秋様!やはりここにお出ででしたか。お屋敷にも居られなかったので入れ違いになったのかと…。」
伝令は息を切らしている。よほど急いでいたのだろう。
「伝令君、大丈夫?〇〇に何かあったの?」
伝令は息を整える。
「お心遣いありがとうございます。実は、主は今朝から風邪をひいて寝込んでおりまして、秀秋様にお移しするといけないので今日はおいでにならないでいただきたいと申しておりました。」
「えっ。〇〇風邪ひいてるの!?じゃあ僕が看病してあげないと!」
秀秋がそう言うと、伝令が慌てて止める。
「秀秋様!ダメです、風邪が移ると主も…。」
すると秀秋はニコッと微笑む。
「僕、〇〇が風邪をひいたら看病してあげるって約束したんだ。約束は守らないとダメでしょ?」
か、かわいい!
伝令は秀秋の笑顔の前に完敗した。
「は、はい!よろしくお願い申し上げます。」
そして無意識のうちに了承の返事をした。
「ありがとう、決まりだね!じゃあ僕、〇〇の部屋に行って来るよ。君はどこかで遊んでおいで。」
「は、はい!」
秀秋は〇〇の部屋に走っていった。
その場に残った伝令は、
「あぁ、〇〇様の風邪が治ったら俺すごい怒られるかも…。」
ということをぼーっと考えていた。
だが。
「秀秋様の笑顔見れたし…。まぁ、いいか。これから越後屋のお団子でも食べに行こうかな…。」
伝令は1人で納得しながら越後屋へ向かう道を歩いていった。
――――――――
秀秋が〇〇の部屋に入ると、〇〇はおしぼりを額に当てて眠っていた。苦しそうに息をしている。
秀秋は〇〇の布団の横に座った。
「ちょっと顔赤いな…。やっぱり熱があるのかな?」
秀秋はおしぼりを取り、〇〇の額に手をあて、自分の額の熱と比べてみた。
「あ、熱い。思ってたよりひどい風邪かも。どうしよう、とりあえずおしぼり替えて、お粥でも作ってこようかな。あ、薬!薬は家康に作ってもらおうかな…。」
看病というのは思ったより大変そうである。
まずおしぼりを替えようと秀秋が立ち上がろうとしたその時、〇〇が目を覚ました。
「…秀秋様!?」
〇〇は秀秋の姿を認める。
「あぁ、起こしちゃった?ごめんね、起こさないように気をつけてたんだけど…。」
秀秋は申し訳なさそうに言う。
だが〇〇はそれどころではなかった。
慌てて布団から起き上がろうとする。
「あぁ、いいよいいよそのままで。無理しないで。」
秀秋は起き上がろうとする〇〇をとどめる。
「し、しかし…。」
それでも無理に起き上がろうとする〇〇に秀秋はニコッと微笑む。
「じゃあ、命令。僕がいいって言うまで起き上がらずに布団にいること。わかった?」
主君の命令、しかもこのとびきり可愛らしい笑顔で言われれば、聞くしかない。
「わ、わかりました。」
〇〇は再び布団に横になる。
秀秋は満足そうに何度も頷く。
「じゃあ、おしぼり替えてあげるね。」
…え?おしぼり?
「あ、あの、秀秋様…?」
「ん?どうしたの?」
「伝令から報告は…。」
「ああ!聞いたよ。君が風邪ひいたっていうから、看病に来たんだ。…あ、伝令君のことは怒らないであげてね。僕が勝手に看病に来たんだから。」
…看病?確かに風邪ひいたら看病してあげるって秀秋様言ってたけど…。あれ、本当だったんだ…。
〇〇が急に黙りこんだので、秀秋様は不思議に思って尋ねた。
「〇〇?どうしたの?どこか痛いところでもあるの?」
秀秋は本当に心配そうな顔をしている。
「いえ、何もないです。秀秋様…ありがとうございます。」
〇〇は主君の優しさに感動していた。
「お礼言われることなんてしてないよ。君は僕の大事な人なんだから、看病くらい当然だよ。」
………!!!
身の程知らずにも誤解してしまいそうな言葉である。
「…あれ、さっきより顔赤いよ?大丈夫?…あ、忘れてた。おしぼりおしぼり。」
秀秋は立ち上がっておしぼりを替える。
その間〇〇の心臓はこれまでになくドキドキしていた。
「じゃあ、お粥を用意して来るね。あと、薬も。ちょっと待っててね。」
秀秋はそう言って部屋から出ていった。
「…風邪ひいて、よかったかも。」
〇〇は小声でそう呟いた。
――――――――
「ただいま〜。」
秀秋はお粥とお茶、そして薬が乗ったお盆を持って帰ってきた。お粥には梅干しが乗っている。
「じゃあ〇〇、起きていいよ。…起きれる?」
「は、はい。」
〇〇は布団から上半身を起こした。
「お粥作ってきたから、食べて。薬も家康に調合してもらってきたから。」
「…!?家康様に!?」
「うん。家康の調合する薬はよく効くって評判なんだよ〜。」
家康様の調合したお薬…。秀秋様に看病していただくことといい、今日は恐れ多いことばかりだ。
「じゃあ、お粥を…。」
お粥を食べようとしたが、お粥の入った茶碗と匙は秀秋が持っている。
「あ、あの、秀秋様…。」
これではお粥が食べられない。
「せっかくだから、僕が食べさせてあげる♪」
…え?今、何と?
「えっと…。秀秋様、冗談…ですよね?」
「え?何が?」
「だから…お粥を食べさせていただくっていうのは…。」
「冗談な訳ないでしょ。はい、あーん。」
秀秋は匙でお粥をすくって差し出す。
〇〇は断る訳にもいかず、差し出されたお粥を食べた。
「おいしい?」
秀秋が無邪気そのものの顔で聞いてくる。
「はい、おいしい、です。」
確かにおいしいお粥だった。だが秀秋が食べさせてくれるということに照れてお粥どころではなかった。
「よかった。さあ、食べて食べて。」
結局、お粥は秀秋に食べさせてもらって完食し、薬も飲んだ。
『良薬は口に苦し』とはいうが、その薬はとても苦かった。
そして、布団に横になると眠気が襲ってきて、次の瞬間には眠りの世界に落ちていた。
「あれ、〇〇寝ちゃったの?…今度こそ、起こさないようにしなくっちゃね。」
――――――――
「んー!」
〇〇は伸びをした。夕焼けの光が部屋に差し込んでいた。
「けっこう寝てたみたいだなぁ。熱も下がったみたいだし。」
…ん?……ええっ?
横には秀秋がすやすやと眠っていた。
寝顔…かわいい!!!
……じゃなくて!
「ひ、ひ、秀秋様!なんでそこで寝てるんですか!?」
「んー?あ、〇〇、起きたんだね。熱は下がったかな?」
そう言って秀秋は〇〇のおしぼりを取り、自分の額と〇〇の額に手をあてる。
「うん、熱は下がったみたいだね。やっぱり家康の薬はよく効くなぁ〜。」
そう言って秀秋は起き上がった。〇〇も慌てて起き上がる。
「あ、あの、秀秋様。なんで私の布団で寝てたんですか?」
「…え?あぁ、君があんまり気持ちよさそうに寝てたから僕も眠くなっちゃってさ。それにちょっと寒かったし。」
ああ、なるほど。
……じゃなくて!
「だ、だからなんで私の布団に…。」
秀秋はきょとんとしている。
「え、ダメだったの?甲斐姫と一緒にお風呂入ったこともあるし、普通にいいかなって思ったんだけど…。…君に嫌われちゃったかな?」
秀秋は悲しそうな顔をする。
「いえ、とんでもない!秀秋様を嫌いになるなんてあり得ません!」
〇〇は慌てて否定する。
「…そう?よかった。じゃあ君も元気になったみたいだし、僕は帰るよ。あ、無理は禁物だからね。」
秀秋は嬉しそうに立ち上がった。
「あ、秀秋様!」
「ん?なに?」
「今日は、ありがとうございました。本当に、秀秋様にお仕えできて幸せです。」
「〇〇は大げさだなぁ。じゃあ、また明日ね。」
秀秋は照れたように笑って部屋を出ていった。
――――――――
「…どうしよう。〇〇様が風邪ひいてるのに羽目外して遊んでしまった…。俺絶対怒られる…。」
伝令は越後屋で偶然出会った男と仲良くなり、久しぶりの休みを満喫していた。
「た、ただいま戻りました…。」
伝令は恐る恐る〇〇の屋敷に帰ってきた。
「あぁ、お帰り。」
…あれ?怒ってない?
「あ、あの、〇〇様。風邪の具合は…?」
「あぁ、秀秋様に看病してもらってよくなったよ。」
〇〇は嬉しそうに言った。
「ねぇ伝令君。…たまには風邪ひくのもいいかもね。」
「え?」
「さぁ風邪も治ったし、明日からお互い頑張ろう!」
「は、はい!」
なんかよくわからないけど、〇〇様の風邪も治ったし、怒られなかったし、これでよかったの…かな?
――――――――――――・後書き
長っΣ(゜д゜;)こんなに長くなるはずでは…。
最後までお読みいただいた方、本当にありがとうございましたm(__)m