その他

□白昼夢
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きみは、忙しく動き回る足を掴んだ。傘もささずに笑顔でブリキ人形のところへ向かうきみを、私はただぼうっと見詰めていた。


私はきみの記憶。
私はきみの意志。
現実のきみに干渉することはできない。きみが正しいと思った道を進み、「この世界」に戻ってくるのをただ見ているだけ。


善意とは各々の価値観で変わるもの。
時には、それが人を狂わせることだってある。きみも――その中の一人なのかもしれない。

濡れたの緑の髪を揺らし、きみは町を翔ける。何かをやり遂げるごとに達成感を得たような屈託のない笑顔を浮かべながら。


「……PP」
「なぁに?お姉ちゃん」
「人形師は喜んでくれた?」
「うん!」
「……そう、良かった」

ああ、そろそろ結婚式が始まる。
不幸せになる人はいない、きみがいる限り永遠のこの世界で。
 

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