短編

□小さな彼に、
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あの日、走って、走って帰った日から、翔陽くんとは、一言も喋っていません。

私が、避けています。




「あ、なまえちゃん、おは・・・」


「・・・・・・」



翔陽くんが何か言う前に、離れていく、ここ数日、ずっとそうしています。



翔陽くんには、たくさんお友達がいて、私といなくても、むしろ私がいないから、たくさんの人が集まってきます。

対する私は、クラスに翔陽くん以外話す人がいなかったので、一人です。




私が、いなくても、翔陽くんは平気だけど、私はそうじゃあありません。
寂しいです。


自分でも、馬鹿なことをしているということは、わかっています。

でも、もう、翔陽くんと普通に接することが、できないんです。




*******
ぼすっ

学校から帰って、自分の部屋のベッドに倒れ込みました。


ぽたぽた、

泣けてきました。あの日から、何回ないているだろう、と、ぼぉっ、と思いました。

枕に水がしみていきます。

もう、元には、戻れない、だろうなぁ。
悲しい、な。






ピンポーン


・・・誰でしょうか、人が感傷に浸っているときに。


今日は家に私しかいません。
もちろん私が出なければなりません。
泣き明かした顔で。





・・・・・・

居留守です。
ただ今この家には誰もいません。




ピンポーン


しつこいですね。
いませんよ。



ピンポーン


だからいませんって。
いらいら。



ピンポンピンポンピンポンピンポン



ガッ
乱暴に玄関のドアを開けます。


「うるさいですねっ、もう!どちら様ですかっ!!」

いらいらが爆発してしまいました。



玄関ポーチには、翔陽くんがびっくりした顔で立っていました。


やっちゃいました。


「え、えと、あの、その、」

きぃー

翔陽くんが何か言おうとする前にこっそりドアを閉めます。


「あ、ま、待って!」


翔陽くんが、ドアを掴みます。
もちろん、脆弱な私の体が、運動神経の塊の翔陽くんにかなうはずがなくて、ドアはまた開かれます。

すると、さらに驚いた翔陽くんの顔。

何でしょう。


「泣いて、たの?」


「・・・・・」

翔陽くんに口を開く気はさらさらありませんでした。



「俺、何か、しちゃったかな?」


翔陽くんの顔が泣きそうです。
心がぐらつきます。


「俺、無神経だし、気づかない内に、何か嫌なこと、しちゃってたんだと思うから、その、ごめんなさいっ」


翔陽くんのせいじゃあ、ないのに。
私が全部悪いのに。


「あと、その、泣いてた、理由は、わかんないけどっ、俺っなまえちゃんの、幼馴染だからっ、相談とか、して欲しい、な。」


もう、なんなんでしょうか、この男は、これ以上私を好きにさせたいのでしょうか。




「あと、その、やっぱり、部活あるから、いつもは、無理だけど、教室とかでは、一緒にいたいな。」



「なまえちゃんがいないと、寂しいから。」



なんだか、もう、どうでもいいや、

関係が壊れるとか、
一人になるとか、
翔陽くんが困るとか、

勇気が出ないとか、


なんでも、いいやぁ。




「翔陽くん、」


「うぁっ、はい!」



「あのね、私____」






小さな君に、もっと小さな私から、伝えること。
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