大嫌いなヒーロー

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いつも通り夕くんに助けられた翌日、私は学校までの道のりを、のろのろ歩いていた。

今日も怖い女の子たちに攻撃されるんだろうな、とか、
授業についていけないんだろうな、とか、
今日の体育の100M走も最下位なんだろうな、
とかいつも通りのことを考えてながら、自分の影を見つめ、足を進める。


あー、何この太陽・・・焼ける。
あまり機嫌が良いとは言えなかった。

のに、



「よっ!なまえ!」


「・・・おはよう、夕くん。」



ああ、朝から嫌な人に会っちゃった。

いや、いつも大抵会うけどね。

いつも憂鬱ですけどね。



「今日も良い天気だなー。」

「そうだねー、何だかぽかぽかするね。」


くそあっちぃよ。


「ははっ、なまえは可愛いこと言うなぁ!」

私よりほんっのちょびっとだけ背の高い夕くんに、髪の毛をわしゃわしゃとかき混ぜられる。


「わ、ちょっやめてよ〜」


本気で、切実に、やめてください。

不器用でセットだなんてできない少し跳ねた頭が、よりすごいことになっちゃうから。


「はははっ」


はははじゃねぇし。


イライラがなかなかすごいこと溜まってきたとき、




どべしゃっ




私は転んだ。水溜りに。顔から。



「・・・・・・・」


どんくさいため、咄嗟に起き上がれない。





「おおぅ、また派手にいったな〜、大丈夫か?」



夕くんが手を伸ばしてくる。



ここはありがたく、甘えさせてもらう。

夕くんの手を取って起き上がる。





泥を少しでも落とそうと、制服を見る。


「わぁ・・・・」



制服がえらいことになっていた。

落とせるレベルじゃあない。

きっと顔も泥だらけなんだろう。


あぁ、もう嫌だ。

何で私は、こんななんだろう。

この通学路で転ぶのは、1年のころから数えてもう何回目なんだろう。

数え切れない。
というか3日に1度は確実にこけている。



「あちゃー、たくっしょうがねぇなぁ、っと」


その様子を見た夕くんが、何を思ったのか、私をひょいっと持ち上げてかつぐ。


こんなに小さな体でよくこんな力が出せるな。
てか、お姫様抱っこじゃないんだ。


いろいろ突っ込みたいけど、取りあえず。



「降ろしてっ」


「よーし!このまま保健室いって顔洗って、予備の制服借りにいくぞー!」


「聞いて!」


夕くんはすでに走り出していた。

パンツ見える!
必死にスカートを押さえる。


あああ、周りの人スッゴイ見てるー・・・


必死に首と目を動かして、夕くんの表情を見る。

・・・全く気にしていないもよう。



なんて強引にマイウェイ・・・

惚れ惚れしないよ。









はぁ、そしてまた、私は言わなくてはならないのだろう。




「ありがとう、夕くん。」


「気にすんな!」



走って少し、息を切らしながら、夕くんは、いつも通りの返事をした。




私を睨んでいるたくさんの女の子達が、視界の隅を通り過ぎていった。
 

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