大嫌いなヒーロー

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小さい頃は、夕くんのことが、大好きだった。


むしろ、初恋の人だった。


黒歴史だ。あれを好きになったことがあるだなんて。





ヒーロー、だった。


いつも、困った時には、助けてくれて、私が仕出かしたミスも、尻拭いをしてくれた。

笑顔で。



夕くん以外の人からは、敵意しか感じなかった私は、ずっと、夕くんの後ろに隠れていた。




いざとなったら、夕くんを盾にできるから。



そんな私の心に気付いていないのか、夕くんは、本当によく、私の面倒をみてくれた。




親にでさえ、呆れられる私を、認めてくれる夕くんが、世界でたった一人の人、だった。












それが偽善だと、気付くまでは。






中学のころ、ふと思った。


なんで夕くんは、私を助けてくれるんだろう。



それが、始まりで、


終わりだった






少し考えたら、解かる事なのに。





___夕くんは、私を助けるとき、いつも、笑顔だった。

幼馴染が、困っているのに、笑っている。



___夕くんは、私に、教えることを、しなかった。

自分が、助けたいだけ、だったから。



___夕くんは、本当に、私のことを、思っているの?







いいや、自分のことしか、考えていない。





結局、ただ、自分がヒーローになりたいだけの、人だった。



私はどんくさいから、そんなことにも、気付けなかった。



14年間が、崩れ去った。









成長するにつれ、女子の恨みも買うようになった。




夕くんが私にかまうことへの、
嫉妬、だ。




私は嫉妬できる彼女達が、うらやましかった。

夕くんから、離れたくて、離れたくて、しかたなかった。










でも、私はもう、飼い殺されていた。

もう、夕くんがいないところで、生きていくことなど、考えられないほど、


成長が、わからなかった。



なんにもできない、やろうと思えない、ごみとなっていた。

もう、夕くんは、私にとって、生きていく上で必要なものと、なった。




全て理解したときは、泣いた。


もう、私は、夕くんの、偽善のあるところでしか、生きられない。














きっと、周りの人たちは、夕くんを、ヒーローだと思っているんだろう。

やったね夕くん、大成功だよ。










私の犠牲の上で、褒め称えられて、嬉しい?
 

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