大嫌いなヒーロー
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いつも通りの、冴えない土曜日の朝、
特に予定は無く、9時ごろまで惰眠を貪っていたが、流石にお腹が空いて、1階に降りていくと、なんだか騒がしかった。
「もー、それでうちの子ったらホントにねー!」
「あらやだ〜!」
「・・・・・・、」
おばちゃん2人が、うちの台所で大声でプチ井戸端会議を開いていた。
てか私のお母さんと夕くんのお母さん。
無駄に迫力があってなんて声をかけていいかわからない。
・・・・・・・もっかい寝ようかな。
「あ、なまえ、おはよう。」
「あら、なまえちゃん、おはよう。」
どうやら私に気付いたようだ。
気付かなくてよかったのに。
スウェットだよ、私。
しかしおばちゃんたちはそんなこと気に止めてもいないようだった。
「・・・おはよう、お母さん、おばさん。」
へらっ、と笑ってみせる。
つくづく、そんな自分が嫌になる。
「ご飯、用意してあるわよ。」
「はぁい。」
その場を離れて、ふぅ、とひとり、息を吐く。
私は、お母さんが、苦手だ。
いや、お母さんが苦手なのではない。
お母さんと接するのが、苦手なのだ。
まぁ私にとって、大半の人間がその部類に入るのだけれど、お母さんは少し違う。
私は、お母さんに諦められている。
もちろん、愛されていないわけではない、と思う。
ただ、期待されていないのだ。
失敗しても、次頑張ろう、なんて声掛けなど、しないのだ。
もう私が頑張っても無駄なことを、私以外で一番よく知っている人だ。
それ故、お母さんは、あまり積極的に私を頑張らそうとはさせない。無駄だから。
我が子に何の価値も見出せなかった母親にどう接しろというのか。
まぁ、おばかな、それすらもわかっていない子として接しているわけだけど。
「え!でも、うちの子にできるかしら〜」
「このくらい大丈夫よぉ!」
朝ごはんを食べ、歯磨きをして顔を洗って、また2人が話しているリビングに通りかかった。
・・・・私の話?
「どうかしたの?」
気になったので聞いてみることにした。
「実はね、なまえちゃんに頼みたいことがあるのよ〜。」
このときから、何だか嫌な予感がしていた。
「・・・・なぁに?」
お母さんが心配そうな目で私を見ている。
「うちの子ったら、今日1日練習なのに、お弁当と、午後からのお茶とスポーツドリンク、忘れてっちゃったみたいでね。」
「あ、今日は用事が___」
「なまえちゃん、学校まで届けてくれないかしら?」
聞かなきゃよかった。
結論。
夕くんのお母さんは、流石夕くんのお母さん、と言うべきか、強引です。