大嫌いなヒーロー

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あぁ、憂鬱。




何で私が夕くんのためにこんなことしなくちゃいけないの。

折角の休みなんだから休ませてよねー。


心の中でぶつくさ文句を言いながら足を前へ進める。


まぁ夕くんのお母さんの前では言えないけどさー







バシッドンッ



ボールの音が聞こえてくる。

ついに第二体育館に辿り着いてしまった。

かなりゆっくり歩いてきたから、もう11時くらいになっていた。




というか、膝が、痛い。

来る途中3回こけた。

血がだらだら流れている。


もうやだ。





涙目になりながら体育館のドアを開ける。



「すいませーん・・・・」


ぎぃ、






すぐ目の前にすごく背の高い男の子がいた。

ふぉぉぉ、かっこいい。



背が小さい人は、なんとなく、あまりすきではない。

夕くんを思い出すから。



ていうか、バレー部にこんな人いたんだー

私バレー部の人って、夕くんと田中君しか知らないからなぁ。


とか思いながらその人を見上げていると、



「・・・何。」


すごく不機嫌な声がかかってきた。

あー、怒らせちゃったかな。



「あっ、ごめんね、えと、背が高いなーって。」


また、馬鹿な子をやるのか、私。

染み付いてるなぁ。



「用、無いんなら、帰ってくれない?」


瞳ブリザードだわ。


そんなときにも、また私は、



「あ、ごめんね。」


へらへら、笑う。


のっぽくんは、少し驚いていたけど、すぐに、


「早く帰って。」


なんてことを言ってくる。



「あ、私、夕くん・・・、えと、西谷くんに用事あるから、呼んで来てもらえないかな。」



「・・・・早く言えよ。」


「ごめんね。」



のっぽくんが夕くんを呼ぶ声が聞こえてくる。


「なんか変な女が来てまーす。」


失礼だな。


その声で、体育館中の人間が私の方を見る。

うぉぅ。






「・・・あんた、膝、ケガしてない?」



のっぽくんが振り向いて、ふと、なんとなくのように私に尋ねた。


「あー、うん。転んだんだー」


「手当てとかしないの?」



「家に帰ったらするよー。」


「ふぅん。」




それきりのっぽくんは、どこかに行ってしまった。



ああいう子は、割と好きだったりする。


だって、私のことを、助けないから。




走ってくる夕くんを眺めながら、そんなことを思っていた。
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