大嫌いなヒーロー

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「あ、西谷の彼女だ。」



いつも通り、夕くんと遭遇しないように学校に来て、教室では女子にハブられて、授業では先生に当てられたけど答えられなかった日の、昼休みのこと。

ドリアンウニジュースを買おうと思って自販機の前に立ったとき、3年生と思われる男二人が何やら失礼なことを言ってきた。



「・・・・・違いますけど。」


「え!?あれ、違うの?」


薄い色の髪の毛の方が驚いている。


「ていうか誰ですか。」


3年に知り合いなんていない。

あ、あの美人マネージャーさんは知り合いにカウントしても良いのかな。うへへ。



「にやけてるとこ悪いけど、ほら、土曜日体育館にいただろ。」


に、にやけてないしっ



・・・・・・・・あ!・・・・笑顔が怖い人だー。

一瞬であのときの恐怖が蘇った。






「・・・・・口に出てるからね?」
「ごめんなさい。」



こわいこわいこわい、クラスの女子より17倍怖い。



「えっ・・・・と、だいきさん、でしたよね?」



「大地だよ。」
「ごめんなさい。」


別に謝らなくっていいよ、とか笑っていらっしゃるけど!
謝りますよ!


「俺のこと無視するなよー。」


「ああ、ごめん、スガ。」


スガさん。
この人は優しそうだ。

そういえば体育館にいたような気がしないでもない。

ほっ


「この人は、ってどう言うこと?」
「ごめんなさい。
お二方とももんのすごく優しそうでふ。」


あれ、今私口に出してない・・・よな・・・・?


「出してないよ。」


こわぁぁ




「・・・・・・だから、俺置いて盛り上がんなよー。」


「盛り上がってませ、
・・・・・・・・何でもないです。」


なになになに?
私何か悪いことしちゃったっけ?



・・・・・・・・・そういえばこれまでの人生で良い事をした覚えはなかった!







「そーいや彼女じゃないんだね。」

スガさんが言う。



「・・・・・・・・・・私が夕くんの彼女とか、ありえませんよ。」


「そう?お似合いだと思うけど。」


もう、その話は、止めてくれませんか。

心が、もやもやするんです。



「そんなこと、ありませんよ。

・・・・このお話は面白くないんでここで終了です。」


「え?」



無理やり話を終わらせて、自販機に小銭を入れて、点滅するボタンの1つを押した。

がこん、とジュースが落ちる音がした。


それをしゃがんで取って、立ち上がった。



「それではさようならです。」



ここから早く、移動したかった。

居心地が悪い。



「・・・・・ねぇ、名前、なんていうの?」



「・・・みょうじなまえですけど。」



「そっか、ありがとう、なまえちゃん。」



何が、とは聞かないでおいた。

足早に、そこを去った。







きっとあの人たちも、夕くんのことをヒーローだと思っているんだろう。

だから、だから、こんなに気持ちが悪いんだ。




















「俺、ドリアンウニジュース罰ゲーム以外で買ってる人初めて見た。」


「俺も。なんかすごくいがいがしそうだよな。」
 

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