大嫌いなヒーロー
□7
1ページ/2ページ
「なまえ!一緒に帰ろーぜ!」
うげ。
夕くんが教室に乗り込んで来た。
今日も無駄に元気100%だ。
目ぇ合わせたくない・・・。
そんな願望はずかずかと私の教室に踏み込んでくるヒーローによりかき消えた。
教室に残っている生徒ほぼ全員が私と夕くんを見る。
あー・・・・・女の子の目が怖いよー。
・・・・・・・・・・・・・・・大地さんよりは怖くないけど。
一緒に帰るとか絶対嫌だし。
無理無理無理拒否拒否拒否。
「夕くん部活はー?」
「今日はない!」
・・・わかってたよ、うん。
早くも私の敗北が決定した。
早すぎる。もっと粘れよ私。
・・・・・・夕くん相手に粘っても意味ないけど。
「おら、遅いぞ、早く準備しろー。」
あ、もう一緒に帰ることは決定ですか。
「うん、ごめんね。」
・・・だから女子の皆さん、怖いですって。
そんな、
何であいつが・・・
あたしのが絶対可愛いのに・・・
調子乗ってんじゃねぇよ亀子が・・・
みたいな目で睨まないでください。
もう言わなくてもわかります、明日はお仕置きですね!
誰か変わって、切実に。いろんなことから。
ひたすらに低いテンションで当の本人である夕くんを見てみる。
「準備できたかー?」
「・・・・・・うん。」
この男は・・・私より鈍感じゃないのか。
「よっし!帰るぞー!」
「わ!ちょ!」
夕くんがいきなり強引に私の手を握って引っ張ってくる。
そしてそのまま早歩きで教室から連れ出された。
ああ、駄目、やめて。
廊下に出ても、その手は繋がれたままで、何がしたいのか理解できなかった。
「お、何だ西谷!ラブラブじゃねぇか!」
ほらやっぱり。
同じ学年の男子がからかってきた。
否定もできずに聞き流していると、夕くんが急に足を止めた。
・・・夕くん?
「おう!うらやましいだろ!」
夕くんは、にかっと、笑った。
きっと、その言葉に他意はない。
ただ、その男子にのっただけだ。
でも、
「なまえ愛してるぜー!」
「こいつ馬鹿だー!」
ぎゃはは、と周りの人たちが笑っている。
わかってる、わかってる、わかってるの。
だから、もう、やめて。